
Robert Cyran
[ニューヨーク 19日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米半導体大手エヌビディアNVDA.Oは19日発表した第3・四半期(2025年8-10月期)決算で驚異的な成長と収益性を保っていることが明らかになった。しかしこの状態がいつまで続くのかについては、決算からほとんど手がかりが得られなかった。今のところ、人工知能(AI)ブームを支える半導体や関連機器を手がけるエヌビディアは、飽くなき需要を享受している。同社が示した業績予測 — そして特に重要なのは、エヌビディアが同社製品を利用する規模の小さい企業に潤沢な投資を行っている点 — は今後の見通しが非常に明るいことを示している。しかし「ドットコムバブル」崩壊前の通信機器メーカーの熱狂ぶりから読み取れるように、機器メーカーは過熱と無縁ではない。
エヌビディアの8-10月期は売上高が570億ドルと前年同期比62%増加。さらに驚くことに、粗利益率は74%に達した。ハイテク大手各社は、自社のチャットボットを動かすデータセンター向けに十分な半導体を確保できておらず、メーカーから製品を高値で購入せざるを得ない状況になっている。
LSEGによると、それにもかかわらずエヌビディアの株価は向こう1年間の予想利益の約28倍と、過去10年平均をやや下回る水準で取引されているのだが、そうはいっても慎重さは必要だろう。AIのような黎明期の分野は本質的に長期的な需要の予測が難しい。もっとも短期については、エヌビディアが発表した25年11月-26年1月期の売上高見通しが前年同期比65%増の650億ドルと市場予想を大きく上回った。
強気な見通しの背景には、顧客の強い需要と、より優れたAIモデルの開発競争で一歩たりとも遅れを取らないために十分な半導体を確保しようとする争奪戦がある。だが、もし熱狂が冷めれば受注は急に冷え込みかねない。1999年の通信バブルの際に、インターネット機器サプライヤーのJDSユニフェーズは売上高が8四半期で16倍に膨らんだが、その後の8四半期で80%も落ち込んだ。
当時も今も、かつて隆盛を誇ったインテルINTC.OからJDSまで強気のサプライヤーは業界のサプライチェーン上のあちこちで投資し、取り分を増やして投資の循環を回し続けようとした。エヌビディアは17日、AI開発企業アンソロピックへの100億ドルの投資に合意。9月には24件ほどの契約を締結したが、この中にはオープンAIが計画している、エヌビディア製品を大量に導入するデータセンターを支援する最大1000億ドルの投資が含まれている。
企業は一般的に、利益が潤沢なときにベンチャー投資を行い、それは景気循環が頂点に達するタイミングと重なる傾向がある。企業が戦略的な目的を達成するためにベンチャー企業に投資する「コーポレート・ベンチャーキャピタル(CVC)」部門が調達した資金は08年と22年の2年間には2倍以上に増えた。過去20年間でハイテク銘柄の比率が高いナスダック指数のリターンが年間でマイナスとなったのはこの2年だけだ。
好況期には、将来の成長という魅力的な幻想が業界を席巻する。逆に不況期には、次の四半期利益を重視する、冷徹なコスト削減という揺り戻しが来る。AIブームは過去の熱狂と異なる展開を見せるかもしれない。しかしエヌビディアの投資拡大の勢いには、どこか非常に聞き覚えのある響きがある。
●背景となるニュース
*米半導体大手エヌビディアが19日発表した第3・四半期(2025年8-10月期)決算は、売上高が前年同期比62%増の570億ドル、純利益が65%増の319億ドルだった。nL6N3WV19A
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)