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〔焦点〕社会の「自由化」進むイラン、水面下で反体制派への弾圧強化

ロイターNov 14, 2025 5:22 AM

Parisa Hafezi

- イランの首都テヘランの通りは活気に満ち、変化の兆しがはっきりと感じられる。女性たちはベールを着けずにジーンズとスニーカー姿で歩き、男性も女性も西側の音楽が静かに流れるカフェでくつろぎ、カップルは手をつないで散策している―。イスラム共和国イランを長らく形作ってきた厳格な社会規範にほころびが生じている。

しかし水面下では、暗い現実が進行している。イラン指導者は、恐怖を植え付け、騒乱を防ぐために反体制派への弾圧を強めていると、イラン国内の反体制活動家4人がロイターに証言した。

人権擁護団体や活動家によると、この数カ月でジャーナリストや弁護士、学生、作家、人権擁擁護団体のメンバーなど数百人が嫌がらせや当局からの呼び出し、拘束など懲罰的措置を受けた。

イラン当局者3人と元改革派幹部1人によると、経済的孤立が深まる中で、国民の世論をなだめるために目に見える規制を緩めつつ、一方で反体制派への弾圧を密かに強化するというのが当局の戦略で、こうした取り組みは計算づくで進められているという。

ワシントンにある中東研究所のイラン・プログラム・ディレクター、アレックス・バタンカ氏は、この戦略は「戦術的な管理」を示しているが、政府の「越えてはならない一線」は揺るぎないと指摘。「こうしたアメとムチの使い分けは意図的なもので、一般市民にはガス抜きの機会を与える一方、腰の据わった反体制活動には固い天井を設けている」と述べた。

イランの指導者は、1979年のイスラム革命以来最大級の試練に直面している。イスラエルとの衝突でイランの軍事・核関連施設は6月に深刻な損害を受け、パレスチナ自治区ガザのイスラム組織ハマスやレバノンの親イラン民兵組織ヒズボラ、イラクの民兵組織など地域の同盟ネットワークも崩壊した。国内では、通貨リアルの暴落、インフレの急騰、深刻なエネルギーと水の不足により経済が打撃を受けている。

「イランは未踏の領域にあり、政権の現在のアプローチは、一貫した戦略というよりも変動の激しい局面を生き延びるための短期的な試行錯誤の連続に過ぎない」とバタンカ氏は言う。

女性の頭髪を隠すスカーフ「ヘジャブ」着用を巡っては、マフサ・アミニさんが法に違反した疑いで拘束されて2022年に死亡した事件をきっかけに抗議デモが起きたが、現在は必ずしも取り締まられていない。

国民の不満が高まる中で全国規模の抗議が再燃することを懸念し、ペゼシュキアン大統領は、昨年末に承認された、強硬派が支持する「ヘジャブと純潔」法の施行を拒否している。

オンラインでは、イランを活気があり友好的な場所として描く華やかな動画が流れ続けている。海外の旅行系インフルエンサーは――中には政府に招かれ、政府の支援を受けているケースもある――古代遺跡、にぎやかなバザール、豪華な料理に驚嘆する様子を投稿。イランは誤解され、不当に悪く言われているというメッセージも発信する。こうしたコンテンツは、安全で魅力的な旅行先としてイランのブランドを再構築する体制派の取り組みの一環だ。

最近のストリートコンサートの動画では、ヘジャブをまとわない若者が踊り、ポップなバラードに合わせて歌う姿が映し出されている。2年前には想像もできなかった光景だ。

<弾圧を隠蔽>

しかしこうした映像は念入りに演出されており、開放を装いつつ、深化する弾圧を隠蔽するのが狙いだと反体制派は指摘する。

イランの死刑執行件数は1989年以来最多だ。国連人権高等弁務官事務所によると、年初来の死刑執行は10月21日時点で少なくとも1176人で、1日平均4人に上る。

2019年のデモで投獄された活動家は「家族への脅迫から活動家、学生、ジャーナリストの逮捕に至るまで、圧力は高まっている。反対派を完全に押しつぶそうとしている」と話した。

イランは政治的にも財政的にも孤立し、イランの支配層は国内の不満と、米国との核協議の行き詰まりという板挟み状態にある。9月に核合意が成立せず、イラン経済への圧迫は一段と強まる可能性がある。

さらに関係当局者によると、イランの権力中枢では、対米外交が崩壊した場合にイスラエルがイランへの攻撃を再開する可能性への懸念が高まっているという。

バタンカ氏は「大規模な抗議が再発するリスクは現実的なものだ。イラン社会は依然として怒り、幻滅し、経済的にも外交的にも行き詰まりが解消されないと確信している」と指摘。イランの最高指導者ハメネイ師については、イスラエルや米国との戦争を避けるために狭いながらも外交の道を維持しつつ、国内的には慎重な譲歩を試行しているように見えるとした。

<高まる弾圧>

6月のイスラエルとの12日間の戦争後に反政府派への弾圧は激化しており、活動家は、社会的規制の緩和はデモを起こさせないための手段だと述べた。「しかし、それは単なる応急処置にすぎない。6月の戦争終結以降に治安当局から呼び出しを受け、脅迫されている。政治活動に関わったら、弟を逮捕すると脅された」という。

戦争後の混乱の中、当局は国家安全保障を理由に広範な弾圧を正当化している。イランの司法は、イスラエルと協力したとされる者に対し迅速な裁判を命じ、議会はスパイ行為に対する死刑の適用範囲を拡大する法案を可決。新法はオンライン活動も対象とし、「虚偽情報」を拡散すると見なされる投稿を犯罪と規定している。イラン司法当局によると、逮捕者は2万1000人以上に上る。

元改革派幹部は「国際的な圧力は高まっており、体制派は権力の喪失を恐れている。だからこそ国内で反体制派への締め付けを強めるのだ」と話した。

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