
[ニューヨーク 29日 ロイター BREAKINGVIEWS] - マイクロソフトMSFT.O、グーグル持ち株会社アルファベットGOOGL.O、メタ・プラットフォームズMETA.Oの米テック大手3社は人工知能(AI)という共通の目標を持ちながらも、関連するリスクの大きさと発生確率の関係を示す「リスク曲線(リスクカーブ)」には大きな差が生じつつある。3社は29日、7―9月期に合計630億ドルを大規模言語モデルの開発のために投じたと明らかにした。マイクロソフトがコスト負担に最も耐えられる構造にあり、アルファベットはより慎重に構えている。マーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)が率いるメタは最大のリスクが潜んでいる。
サティア・ナデラCEOが率いる時価総額4兆ドルのソフトウエア大手マイクロソフトは7―9月期決算の売上高が前年同期比18%増となった。クラウド事業「アジュール」が40%成長したことがけん引し、AI事業も10-12月期の滑り出しが好調だ。対話型生成人工知能(AI)「チャットGPT」を手がける米オープンAIは28日、マイクロソフトから2500億ドル相当のストレージと関連サービスを追加購入すると発表した。両社の関係をより幅広く再編する流れの一環だという。
マイクロソフトのAI支出について懸念する理由は複数ある。7―9月期の設備投資額は30%増の190億ドルに膨らんだ。データセンターの多くが長期リース契約に頼っているため、総支出額を過小に見積もっている。とはいえ、法人顧客を中心としたビジネスモデルが並外れた安定性を保っている。法人顧客はしばしば取引先を乗り換えようとせずに、継続して契約料金を支払うからだ。ナデラCEOは問題が生じれば投資を抑制し、コンピューターの余剰容量を社内利用に振り替えるだろう。
グーグルの主力であるウェブ検索事業はAIから最も差し迫った脅威に直面している。ジェミニやその他のAIは、ユーザーが情報を迅速に検索し要約できるようにし、従来の検索バーや恐らくは関連広告に取って代わる可能性があるが、これまでのところその効果は限られている。検索関連の広告収入は前年同期比15%増の約600億ドルだった。スンダー・ピチャイCEOもまた油断していない。クラウド事業の収入はまだ売上高全体に占める割合が小さいものの34%増の大幅な伸びを見せ、営業利益率は17%から24%に改善した。
交流サイト(SNS)「フェイスブック」や写真共有アプリ「インスタグラム」も理論的には同様のもろさを抱えている。今のところ、メタの7―9月期の売上高は26%増の500億ドル超でそのほぼ全てが広告収入だ。だが、メタは収益が変動した場合に衝撃を和らげるクラウド事業のようなクッションを持たない。さらに、オープンAIが開発した短編動画アプリ「ソラ」のような新手のサービスが将来的にメタのSNS事業の競争相手となる可能性がある。
さらに言えば、ザッカーバーグ氏のAI投資姿勢は極めて大胆だ。メタは競争とインフラ容量の必要性から、設備投資額について来年は今年の計画よりも大幅に引き上げると警告した。今年の計画額自体も上方修正された。
3社のリスク許容度の違いは、それぞれの財務比率に表れている。
ビジブルアルファが7―9月期決算の発表前に集計したデータによると、2026年の設備投資とリース支出がキャッシュフローに占める割合はメタが78%で、マイクロソフトが75%、アルファベットが52%だった。ザッカーバーグ氏は威勢がいいが現時点で成果があまりなく、失うものがより大きいのだ。
●背景となるニュース
*マイクロソフト7─9月売上高、クラウド好調で予想超え 高額投資に不安の声もnL6N3WA179
*アルファベット、投資額引き上げ クラウド・広告好調で業績予想超えnL6N3WA1AO
*米メタ、来年の設備投資拡大を予想 積極的なAI投資でnL6N3WA1AC
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)