〔アングル〕ＡＩに恋愛アドバイス求める人々、出会いからデートまで指南

Hani Richter

[４日　ロイター] - マッチングアプリで相性が一致した女性のプロフィールを眺めていた米南部フロリダ州マイアミ出身のドミトリーさん（３５）は、どうやって会話を始めれば良いか分からなかったので、人工知能（ＡＩ）恋愛コーチ付きデート支援アプリ「Ｒｉｚｚ（リズ）」を活用することにした

相手女性のプロフィール――スキーや夏のコンサート、ワインが好き――のスクリーンショットをリズに送り、無理なく会話を始められる文章作成を指示したところ、すぐに結果が表示された。

そしてリズの提案に従って、「私も全て大好きです。初デートにはどれがいいのか、決めるのが大変になりそうですね」と送信した。

ドミトリーさんは「リズは多少風変わりで面白みのある回答をくれる」と話し、このアプリのおかげで話をする段階から「実際に会う段階」へ進むことができたと評価。「相手の注意を引くような、ちょっと面白い話題で会話するのを手助けしてくれる」と説明した。

オンラインの出会いを求める人々に向けて、返答の作成からプロフィール最適化、あるいはいつ諦めて次に行くかの決断まで寄り添う形で支援してくれる新たなＡＩツールが登場しつつある。

リズとは「Ｃｈａｒｉｓｍａ（カリスマ）」を略した口語表現で、運営企業によるとモバイルとウェブのアプリは世界中で計１５００万人の利用者がいる。サブスクリプションの月額は１９．９９ドルで、有料会員数は非公開という。

創業者のローマン・ハブス氏は「リズをもっと自然で人間的な会話ができるようにしたい。より素早くアプリから離れて実際のデートをする段階へとユーザーを導く力になることを望んでいる」と述べた。

ＡＩが生成したメッセージを受け取っている人は、実感より多いかもしれない。キンゼー研究所と「ティンダー」や「ヒンジ」などのマッチングアプリを所有するマッチ・グループが最近行った調査からは、米国の成人の４分の１強、Ｚ世代では半数近くが、マッチングのフィルタリングやメッセージ作成にＡＩを活用していることが分かる。

もう１つの人気のアプリが「ＹｏｕｒＭｏｖｅ　ＡＩ（ユアムーブＡＩ）」で、費用は月額１２．９９ドル。デート用プロフィール作成や相手への返信、さらには写真を「盛る」作業まで支援してくれる。

創業者のドミトリー・ミラキャン氏は、２０２２年にこのアプリを立ち上げたのは、内気だったり、社会的な面で気まずさを感じたり、マッチングアプリ特有の奇妙なやり取りに苦戦したりしている人たちのためだったと説明する。「やり取りはとても消耗するものだ。拒絶されることもあれば、返信がない、あるいは突然連絡がなくなる場合もあり、精神的な痛みを感じてしまう」と、付け加えた。

ただそうしたアプリはドミトリーさんのような利用者を対面デートに進ませてくれる半面、ある種の逆説も生み出す。つまり人工的なものから本物の関係が築けるのか、という点だ。一部の人からすると、会話内容がいささか「洗練され過ぎ」と感じた瞬間に、その答えが判明する。

ロンドン在住の文筆家ソフィー・シャーウィンさん（５２）は、中国系動画投稿アプリ「ＴｉｋＴｏｋ（ティックトック）」のダイレクトメッセージを通じて恋愛に発展するかもしれない人物とやり取りをしていた。しかし過度に詩的でロマンチックな返信を受け取った際に「このメッセージは（対話型ＡＩの）チャットＧＰＴが作成したのではないか」と疑いを持つようになった。

「相手男性の返答はあまりに完璧だった。完璧過ぎて現実の人間とは思えなかった」という。

この相手はチャットＧＰＴの使用を認めなかったものの、シャーウィンさんは正直に話してくれていれば気にしなかったと思うと打ち明ける。デートの目的は人間同士のつながりを築くことに尽きるが、シャーウィンさんはＡＩが会話に介入してくると疑うようになると、その認識が失われたと感じたと話す。

「危険なのは完璧さに恋する可能性だと思う。つながりのない完璧さに」と指摘した。

米東部ニューヨークを拠点にデート指南の仕事をしているグレース・リーさんは、お互いが意思疎通する方法を学ぶのを手助けすることに重点が置かれるべきだと主張する。リーさんは顧客によくあるデート状況を練習する機会を与え、実際の場に備えられるようにＡＩやＶＲ（仮想現実）を利用している。

「デート支援アプリはアルゴリズムやユーザー体験の完璧化に多額の費用を投じているが、人々が自分のことについてきちんと話すことを学ぶのを後押しするという面には全く投資していない」と分析した。

米東部ニュージャージー州の人間関係専門家で心理学教授のギャリー・レワンドフスキ氏は、本当に困ることがない限り、自力でプロフィールやメッセージを作成するよう助言している。

「将来どこかの時点で誰かと現実のデートをして、リアルな自分を見せなければならない。だからまず、本当の自分と仲良くなっておくべきだ」と述べた。