Dawn Kopecki Jarrett Renshaw Sabrina Valle Ernest Scheyder
[ニューヨーク 2日 ロイター] - トランプ米政権は、国家安全保障や経済安全保障に不可欠とみなされる最大30の業界とのディール(取引)を進めているもよう。政権側は関税減免と引き換えに、譲歩や収益保証、経営難の企業の株式取得といったさまざまな施策を提案しているという。協議に詳しい関係者が明かした。
情報筋によると、米製薬大手イーライリリーLLY.NやファイザーPFE.N、英製薬大手アストラゼネカAZN.Lなど大手製薬会社の幹部は、ワイルズ大統領首席補佐官を含むホワイトハウスのスタッフや保健福祉省や商務省など省庁の幹部から、医薬品の増産や米国本社新設の検討要請などを巡り、ほぼ毎日電話を受けている。
関係者によればこれは氷山の一角で、半導体や人工知能(AI)、量子コンピューティング、重要鉱物、造船などさまざまな分野が政権の働きかけを受けているとされる。
同筋によると、このディールメイキングは2026年の中間選挙を見据え、トランプ大統領の政治的成果をアピールすることが狙い。2人の情報筋は、ディール自体と同じくらい重要なのは見た目で、トランプ氏が自ら成果を発表することに意味があると語った。
イーライリリーの広報担当者は、政権とのやり取りについては承知していないとし、「米国企業として、われわれは米国での製造能力の拡大に尽力している」と言及。ファイザーとアストラゼネカはコメントを控えた。
ホワイトハウスも政権の具体的な計画の詳細についてはコメントを控えている。
関係者によると、この計画では政府の広範な権限を使って製造業の米国移転や中国への依存度の低減、重要製品の供給網強化、政府の財政への貢献といったトランプ大統領の目標の推進を企業に働きかける。
トランプ政権は政府系金融機関の国際開発金融公社(DFC)に計画の監督と資金拠出で重要な役割を担わせる方針という。
また米政府当局者はロイターに対し、政権は日本が貿易合意の一環として米国に投資する5500億ドルを、ラトニック商務長官が率いる新たな米国投資促進機関の資金として活用する計画だと述べた。
関係者によると、この投資促進機関とDFCは、トランプ氏が当初計画したもののその後廃案となった政府系ファンドに代わる存在になるという。