Emma Rumney Jennifer Rigby
[ロンドン 24日 ロイター] - ベルギーのビール業界やメキシコのテキーラ製造会社、オランダのビール大手ハイネケンHEIN.ASといったアルコール飲料会社や業界団体は今年の夏、アルコール飲料に対する一段と厳格な規制を導入する世界保健機関(WHO)の取り組みに抵抗するためロビー活動を積極的に展開した。ロイターが入手した書簡や電子メールでアルコール飲料業界の取り組みが初めて明らかになった。
WHOなどの保健当局は、飲酒は少量の場合でも、特定のがんなどの疾病のリスク上昇と関係があると警告している。
だがアルコール飲料会社は、科学的分析はより複雑であり、適度な飲酒であればリスクは低いと主張。世界の酒類業界団体「インターナショナル・アライアンス・フォー・リスポンシブル・ドリンキング(IARD)」のブレイスウェイト最高経営責任者(CEO)はロイターに、酒類業界は「アルコール飲料を巡る論争の主導権を取り戻す」と述べた。
IARDに加盟する企業は、アルコール飲料を巡る科学的議論でIARDがより積極的な役割を果たせるようにするとともに、保健機関からのメッセージに反論するため、IARDへの資金拠出を増やしている。
こうした論争で現在、焦点となっているのは、アルコールに関連した疾病を含む非感染性疾患に対処する目標を設定するため、9月25日に採択される予定のWHOが支持する新たな合意だ。今年5月に公表された合意の最初の草案に、WHOが支持するアルコール規制が盛り込まれた。だが9月に改訂された草案では、規制は撤回されたり緩められたりしている。
WHOは先週、この改訂について、アルコール飲料業界による働きかけを含む強烈なロビー活動の影響を受けたと説明した。
5月に最初の草案が公表された直後にメキシコのテキーラ業界団体CNITがメキシコ政府に送った書簡では、CNITはメキシコ当局に対し、アルコールに課す税金の引き上げや店頭で販売できる酒類の制限を含む、WHOが支持する政策に言及した部分を削除するため、他国政府との話し合いを活用するよう要請した。
これらの提案は9月の草案では、各国は「自国の状況に応じて」増税を「検討」すべきであり、店舗で販売できる酒類の制限も「検討」すべきという表現に緩められた。
またハイネケンがメキシコ政府に送った書簡は、アルコールの広告を禁止もしくは規制する提案を、未成年者向けの広告に絞る形に変更するよう求めた。
9月の草案では、アルコールの広告を制限する措置は撤回されている。
一方、ベルギーのビール業界団体は今年6月に同国の副首相府に送った書簡で、同国の保健相がWHOのアルコール規制を巡って「急進的な姿勢」をとっていると苦言を呈した。同業界団体は、アルコール依存症といった有害な消費の影響を減らすことに関する記述を、全ての飲料に関する声明へと変える試みに言及している。