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COLUMN-〔BREAKINGVIEWS〕エヌビディアのインテル出資、28年前のMSとアップルとの違い

ロイターSep 19, 2025 1:54 AM

Robert Cyran

- 米半導体大手インテルINTC.Oにとってアップル AAPL.Oと無理なく比較されるという状況は、まれに見る勝利かもしれない。ただ問題は、比較対照が28年前のアップルであり、現在の巨大企業ではないことだ。米半導体大手エヌビディアNVDA.Oは18日、同業のインテルに50億ドルを出資すると発表した。これは遠い昔、マイクロソフト(MS)MSFT.Oが苦境にあえぐアップルに投資した状況に似ている。いずれの場合も、困難に陥った企業が資金を獲得する一方、業界を支配する企業の側は安価に政治的信用を獲得することができた。ただ今回の合意で欠けているのは、アップルの携帯型音楽プレーヤー「iPod」のような復活への道筋だ。

1997年、アップルは瀕死状態だった。スティーブ・ジョブズ氏は復帰していたが、会社は資金をたれ流していた。MSによる1億5000万ドルの出資と、アップルの「Mac」でMSのソフトウエア「Office」をサポートするとの合意が、アップルに経営立て直しの時間と確信を与えた。MS側も同様に恩恵を受けた。当時ビル・ゲイツ氏が率いていたMSは、アップルのおかげで競争を保っているという体裁を整えられ、反トラスト法(独占禁止法)訴訟を乗り切ることができた。

人工知能(AI)用半導体のおかげで、エヌビディアの時価総額は現在4.4兆ドルと世界最高を誇る。しかし米中貿易摩擦が同社の世界支配を脅かしている。同社は、米国の輸出規制を一因とする地政学的緊張が緩和されれば、今四半期の売上高が50億ドル増加する可能性があるとしている。一方、英紙フィナンシャル・タイムズが報じたところでは、中国当局は企業に対しエヌビディア製半導体の購入停止を指示している。nL6N3V40F7

インテルへの出資は少なくとも米政府を満足させるかもしれない。ホワイトハウスは、最先端半導体製造を国内に留める上で最大の望みの綱であるインテルの復活に力を注いでいる。エヌビディアの出資は巨額ながら、LSEGのデータによれば、今年予想される同社のフリーキャッシュフローのわずか19日分に過ぎない。

両社は双方の技術を融合した製品の開発にも乗り出す。インテルはこの支援を活用できるかもしれない。アナリストは、同社が製造上の優位を取り戻すための多額支出により今年70億ドルの現金を消耗すると予測している。かつてインテルの最重要事業だったデータセンター向けチップ設計でエヌビディアと提携すれば、同分野でのシェア低下を食い止められるかもしれない。インテルのこの分野の売上高は今年、10年前と同水準にとどまると予想されている状態だ。インテル株が18日に22%も上昇したのには、こういう訳がある。

今回の提携は過去のMSとアップルを彷彿させるが、大きな違いがある。アップルはカラフルな「iMac」から大ヒットした「iPod」、世界を変えたスマートフォン「iPhone」に至るまで、画期的な製品アイデアにあふれていた。インテルはエヌビディアの力で従来製品を強化するが、真のAI分野での飛躍はまだ見られない。さらに悪いのは、まずは成功する必要があることだ。つまり、製造強化が業績に結び付くには、十分な規模を獲得しなければならない。資金確保は助けにはなるが、おそらくは最も小さな問題に過ぎない。

●背景となるニュース

*エヌビディアは18日、インテルの普通株を1株23.28ドル、総額50億ドルで取得すると発表した。両社は提携関係を結び、データセンターとPC向けに両社の技術を統合したカスタムチップを開発する。nL6N3V50LX

*8月にはソフトバンクグループがインテル株を1株23ドル、総額20億ドルで取得することに合意していた。

* 1997年、マイクロソフトはアップルに1億5000万ドルを投資することで合意した。



(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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