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〔アングル〕米政府のインテル出資、ファウンドリー事業再建は険しい道のり

ロイターAug 25, 2025 2:40 AM

Jaspreet Singh Max A. Cherney Sayantani Ghosh

- 米政府はトランプ大統領の肝いりで、半導体大手インテルINTC.Oに89億ドル(約1兆3000億円)を投資する。ただこの出資だけで、同社のファウンドリー(受託製造)事業を軌道に乗せることはできないだろう、と複数のアナリストは予想している。

インテルが次世代半導体プロセス「18A」と「14A」のために必要としているのは大口の顧客で、少なくとも短期的に見つけ出すのは難しい。

3月に就任したリップブー・タン最高経営責任者(CEO)は先月、大口顧客を得ることができなければファウンドリー事業から撤退せざるを得ないかもしれないと発言。「この先の14Aへの投資は顧客からの確定した購入の約束に基づいたものになる」と言い切った。

サミット・インサイツのアナリスト、キンガイ・チャン氏は、タン氏のメッセージに込められた経済合理性を強調した上で「インテルが18Aと14Aの生産に乗り出し、ファウンドリー事業が存続できるようにするためには、顧客の十分な『数』を確保することが必須だ」と述べた。

チャン氏は「インテルが満足な顧客を手に入れられなければ、いかなる政府出資もファウンドリー事業の命運を好転させるとは思わない」と話している。

かつて米国の半導体生産能力と同義語だったインテルは、何年にもわたる経営上の失策を経て業界トップの座を台湾積体電路製造(TSMC)2330.TWに明け渡し、人工知能(AI)用半導体開発でもエヌビディアNVDA.Oに差をつけられている。

窮地に陥ったインテルに今求められているのは、最先端半導体の製造能力を証明し、顧客を取り込むことだ。しかしロイターの報道によると、現時点でインテルは、14Aよりも線幅が大きい18Aの「歩留まり率(完成品のうち正常に動作する製品の割合)」が低いという問題に直面している。

TSMCなどの大手ファウンドリーはアップルAAPL.Oのような顧客と協力する際に、製造当初の歩留まり率の低調さに伴うコストを吸収できるが、6四半期連続で赤字を計上しているインテルはそうしたコストを負担しながら黒字にするのは困難だ。

ガベリ・ファンズのアナリスト、マキノ・リュータ氏は「歩留まりが悪ければ、新規顧客はインテルのファウンドリーを利用しなくなるので、技術面の問題を決して解決できない」と語る。

マキノ氏は、最終的にはインテルが最適な歩留まり率で製造可能になると信じているものの、トランプ政権による出資は、バイデン前政権が半導体産業強化のために制定した「CHIPS法」で約束されていた資金提供に比べて、インテルにとって差し引きでメリットより弊害が大きいとの見方を示した。

「今回は制約のある資金だから」という。

インテルによると、米政府は同社の取締役ポストを要求しないし、株主の承認が必要な事案では経営陣の意向に賛成する方針だ。ただそうした投票の取り決めには「限定的な例外」が規定され、政府はインテルの株式を22日終値より17.5%も割安な価格で取得する。

トランプ氏とインテルはともに株式取得取引がいつ行われるかは明らかにしてないものの、実現すれば政府が筆頭株主になる。

<ガバナンスへの影響に懸念も>

トランプ政権にとってインテルへの出資は、米国内の製造拠点を拡充して雇用を戻すというトランプ氏の基本的な望みに沿った措置と言える。トランプ氏は一時、中国企業とのつながりを理由にタン氏の辞任を要求したが、すぐに軌道修正している。

複数のアナリストは、インテルが工場建設などを含めて政府の支援を受けられるのは追い風になると予想する。

インテルは既に、1000億ドル超を投じて米国内の工場を拡張するとともに、年内に西部アリゾナ州の工場で半導体量産化を開始すると表明している。

チェース・インベストメント・カウンセルのピーター・タズ社長は「資金と事業成功を期待する新たな株主を手に入れたのはいずれも重要な意味がある」と指摘した。

今回の89億ドルの投資に加え、これまでに交付された助成金が22億ドルあるため、インテルに対する政府の資金拠出総額は111億ドルに上る。

ただクレジットサイツのシニアアナリスト、アンディ・リー氏は「政府出資はインテルが『大きすぎてつぶせない』企業だという強いシグナルだと受け止められる半面、それがガバナンス(企業統治)にどう作用し、インテルが株主の最善の利益のために行動する能力にどのような影響を及ぼすかが懸念される」と述べた。

リー氏は「インテルは逐次政府資金を受け取るわけではなく、政府の支援提供意欲が次第に弱まることを意味する」とみている。

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