Clyde Russell
[オーストラリア、ローンセストン 8月11日 ロイター] - ロシア産原油の継続的な購入をめぐるインドに対する米国の脅しに対する原油市場の悲観的な反応は、実際にはほとんど起こらないという事実上の賭けである。
ドナルド・トランプ大統領は、8月6日にインドからの輸入品に25%の追加関税を課す際、インドによるロシア産原油の輸入を引き合いに出した。
新たな関税率((link))が実施された場合、一部のインド製品に対する関税率は最大で50%に達し、2024年に総額約870億ドルに上ったインドからの米国輸入を事実上終了させるのに十分な高水準となる。
トランプ大統領に関連するすべてのことと同様、彼の裏切りや方向転換の実績を考えると、慎重であるべきだ。
短期的には、今週アラスカで予定されているロシアのプーチン大統領との会談を前に、プーチン大統領への影響力を強めたいようだが、そのためにインドを利用しているようだ。
トランプ大統領がインドへの追加関税を実行に移すかどうかはまだわからないが、ウクライナの和平交渉がまとまる可能性は低そうだ。
しかし、この結果は現在の原油価格には反映されていない。
世界的なベンチマークであるブレント先物LCOc1は、トランプ大統領がインドへの関税引き上げを発表して以来軟調に推移しており、月曜日のアジア取引開始時には1バレル65.81ドルと、過去2カ月で最低の水準まで下落した。
これは、世界的な供給を脅かす脅威を完全に割り引いた価格であり、インドがロシア産原油を現在と同量買い続けるか、世界市場を逼迫させることなく適切な代替原油を容易に調達できることを想定している。
これは妥当な仮定だろうか?
原油市場の実績は、新たな地政学的現実に素早く適応し、価格高騰があっても短期間で収まる傾向があるという点で、やや注目に値する。
2022年2月にロシアがウクライナに侵攻した際、欧州をはじめとする欧米諸国がロシア産原油の購入を控えたため、原油価格は1バレル150ドルに向かって急騰した。
しかし、4ヵ月も経たないうちに、価格はモスクワが隣国を攻撃する前の水準に戻った。市場が、割安になったロシア産原油を中国やインドに振り向けたからである。
言い換えれば、世界中の石油の流れは変わったが、輸入業者が入手できる量はほとんど変わらなかったのである。
今回は違うのか?
しかし、トランプ大統領が今提案していることは少々違う。ウクライナ問題でモスクワに取引するよう金融面で圧力をかけるため、ロシアのバレルを市場から切り離そうとしているようだ。
ロシア産原油の主要な買い手は、事実上インドと中国の2カ国しかない。
世界最大の原油輸入国である中国は、米国や欧米諸国が自国の精製された重要な鉱物資源やその他の鉱物資源に依存していることから、トランプ大統領に対してより大きな影響力を持っている。
特にリライアンス・インダストリーズRELI.NSのような民間精製業者は、欧米経済とのビジネス関係やアクセスを維持したいだろう。
商品アナリストのKplerがまとめたデータによると、インドは今年上半期にロシア産原油を日量約180万バレル、全体の約37%を輸入した。
輸入原油の約90%はロシアの欧州港からで、主にウラル級であった。
ウラル原油はミディアムサワーで、インドの石油精製業者がウラル原油の輸入をすべて他の供給国からの同グレードの原油に置き換えることは困難である。
サウジアラビアのアラブ・ライトやイラクのバスラ・ライトなど、同品質の中東産原油もあるが、インドがこれらの原油をより多く求めれば、価格が上昇する可能性が高い。
インドが手放したロシア産原油の大半を中国の精製業者が引き取ることができれば、原油の流れを入れ替えることができるかもしれないが、それはトランプ大統領が望んでいることではないようだ。
トランプ大統領とその顧問団は、米国やその他の国には、ロシアからの原油供給が最大200万B/D喪失しても十分に対応できる余剰生産能力があると考えているのかもしれない。
しかし、その理論を試すことは、特に供給不足となる特定の種類の中量原油の価格上昇につながるかもしれない。
米国の生産量が増えればインドの製油所への供給が可能になる、というのは単純な話である。
今のところ原油市場は、トランプ/インド/ロシア情勢は、Trump Always Chickens Outの頭文字をとったTACOのような形で終わると考えている。
しかし、現実はもう少し厄介なものになりそうだ。インドの一部の石油精製会社はロシアからの輸入を控え、中国の一部の石油精製会社は買い増しをする可能性があり、原油市場は再び地政学的なメリーゴーランドに乗ることになるだろう。
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ここで述べられている見解は、ロイターのコラムニストである筆者のものである。