tradingkey.logo

COLUMN-〔BREAKINGVIEWS〕米国の未来台無し、決して「美しくない」税制・歳出法案

ロイターJul 3, 2025 7:48 AM

Gabriel Rubin

[ワシントン 1日 ロイター BREAKINGVIEWS] - トランプ米大統領が得たのは、犠牲が大き過ぎて割に合わない勝利の極致だった。議会上院は1日、包括的な税制・歳出法案をわずか1票差で可決したが、トランプ氏がこの法案を「大きく美しい」と呼ぶのはまさに「看板に偽りあり」と言える。財政的な破滅をお膳立てし、脱化石燃料の取り組みを後退させ、多数の国民から医療保険を奪うことで、米国の未来を見るも無惨な形にしてしまうからだ。

法案の根底にあるのは、与党共和党の減税に対する熱意にほかならない。法人税率は35%から21%に引き下げられ、第1次トランプ政権時代の時限措置は恒久措置に切り替わる。個人に対する各種減税を含めると財政不安は約5兆ドル、歳出削減による相殺後でも3兆3000億ドルに上る。

その財源の一部、1兆ドルは高齢者向け公的医療保険メディケアや低所得者向け公的医療保険メディケイドなど医療関連歳出削減で賄われる。これにより議会予算局(CBO)の見積もりでは1200万人近くが保険から閉め出される。またバイデン前政権が導入したクリーンエネルギー補助金廃止を通じて5000億ドルを捻出。さらに幅広い政策のベースラインを再設定することで、一見すると歳出総額が低くなった体裁となる。

これは信じられないほど近視眼的な計画だ。上院では連邦政府所有地や海での石油・ガス採掘を容易にする条項は削除されたものの、国内で育ち始めたばかりの太陽光・風力発電産業への支援を急速なペースで撤廃することで、気候変動の影響が加速し、雇用創出は鈍化するばかりか、大量の電力を消費する人工知能(AI)技術の発展を阻害しかねない。国内総生産(GDP)も打撃を受けるかもしれない。例えばメディケイド向け歳出1ドル当たりの経済効果は1ドルより大きいためだ。

財政赤字抑制はもはや議会の優先事項ではなくなり、いかなる歳出削減もほとんどは人道支援圧縮か金融規制緩和の隠れ蓑に過ぎない。しかも貿易摩擦や政府債務増加が対米投資への不安を助長し、ドルは今年に入って10%余り下落している。

少なくとも幾つかの有害なアイデアはなくなった。消費者金融保護局(CFPB)は生き残り、各州は向こう10年にわたってAIを規制する権限を手に入れる。外国企業が最大20%の「報復税」を課される事態は免れた。しかし全体的に、法案は経済面だけでなく政治面でも非常に厄介な存在になりそうだ。

世論調査からも風当たりの強さが分かる。FOXニュースが6月半ばに行った調査では、法案反対が5分の3近くに達した。ペンシルベニア大学ウォートン校の予算モデルでは、法案に伴う連邦債務の増加ペースは経済成長のスピードをはるかに上回る。そうした状況を受け、実業家イーロン・マスク氏もトランプ氏批判を再燃させている。現在下院に審議が移った法案を巡り、マスク氏は新党を立ち上げ、法案支持の共和党議員の対抗馬を資金面で応援すると約束した。トランプ氏が手に入れそうな「大きく美しい」法律は、あっという間に美しさを失うだろう。

●背景となるニュース

*米上院、トランプ減税・歳出法案を可決 下院で2日再採決もnL6N3SY0SM

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

UPDATE 2-米上院、トランプ減税・歳出法案を可決 下院で2日再採決も nL6N3SY0SM

免責事項:本記事の内容は執筆者の個人的見解に基づくものであり、Tradingkeyの公式見解を反映するものではありません。投資助言として解釈されるべきではなく、あくまで参考情報としてご利用ください。読者は本記事の内容のみに基づいて投資判断を行うべきではありません。本記事に依拠した取引結果について、Tradingkeyは一切の責任を負いません。また、Tradingkeyは記事内容の正確性を保証するものではありません。投資判断に際しては、関連するリスクを十分に理解するため、独立した金融アドバイザーに相談されることを推奨します。

おすすめ記事

tradingkey.logo
tradingkey.logo
当社が提供する日中データはRefinitivより配信されており、同社の利用規約が適用されます。終値データ(過去・現在)についてもRefinitivより提供されています。全ての相場情報は現地取引所時間で表示されます。米国株式のリアルタイム最終取引価格はNasdaqを通じて報告された取引のみを反映しています。日中データは最低15分遅れ、または各取引所の要件に準じて遅延配信されます。
* 当コンテンツ(分析資料・取引戦略等)は第三者プロバイダーであるTrading Centralより提供されており、記載の見解は分析官の独立した評価及び判断に基づくものです。投資家個々の投資目的や財務状況は考慮されておりません。
リスク告知:当社ウェブサイト及びモバイルアプリは特定の投資商品に関する一般的な情報のみを提供しており、Finsightsは金融アドバイスや投資商品の推奨を行うものではありません。本情報の提供をもってFinsightsが投資助言を行っていると解釈されることはありません。
投資商品には元本割れを含む重大なリスクが伴い、全ての投資家に適するものではありません。なお、過去の運用実績は将来の成果を保証するものではありません。
Finsightsは、第三者広告主または提携先が当社ウェブサイト・モバイルアプリ上に広告を掲載することを許可する場合があり、これら広告主から広告への反応に基づく報酬を受けることがあります。
© 著作権: FINSIGHTS MEDIA PTE. LTD. 無断複写・転載を禁じます。
KeyAI