tradingkey.logo
tradingkey.logo
検索

COLUMN-中東緊迫でドル需要急拡大、国際通貨システム多極化の険しい道のり

ロイターMar 5, 2026 4:06 AM

Jamie McGeever

- 今週は中東の混乱を受け、投資家がドル買いに殺到した。ドル中心の金融システムがより分断化、多極化された仕組みへと移行する道のりがかなり曲折を経る可能性を思い起こさせる光景だ。

米国とイスラエルが2月28日にイランへの攻撃を開始したことをきっかけに戦火は中東全域に広がり、世界で最も流動性の高い資産で比較的安全と見なされたドルの価値が押し上げられた。

1-2月を通じてアウトパフォームしてきた各国の株価指数は急落。2月に50%高となった韓国株はわずか2日で20%近くも値下がりした。プライベートクレジット・ファンドの解約請求は急激に増え、米国債さえ利回りが上昇(価格が下落)する中で、ドルは2日間で最大2%跳ね上がった。

サトリ・インサイツ創業者のマット・キング氏は、ドル高騰は経済成長ないし物価の見通しが急に変わった結果ではなく、単純な「資金フロー」の産物だと指摘する。つまり投資家があわてて流動性確保に走るとともに、最近数カ月に多くの市場で生まれた小さな泡(フロス)が立ち所にしぼんだということだ。

ドルの価値が長期的に下がるのではないかとの懸念が出ているにもかかわらず、足元では安全な避難先を求める投資家が引き続きドル保有を望み、必要としている。

<ドル衰退加速も>

こうした事態は、ドルの優越性が長期にわたって崩れ続けた場合、将来の危機でどのようなことが起きるのかという疑問を提起する。

国際貿易や決済、外貨準備資産として最も需要があるのは間違いなくドルだが、主要通貨に対するドル指数は、1999年のユーロ導入や2001年の中国の世界貿易機関(WTO)加盟以降、下落歩調をたどっている。

国際通貨基金(IMF)のデータに基づく世界の外貨準備に占めるドルの比率は、2000年代初めは70%強だったものの、今は57%に低下した。

ただドルの価値減少がすんなりと、かつじわじわと進行したため、ドルの流動性は拡大が続き、国際金融システムは2008年の金融危機と2020年のコロナ禍というショックを克服した後、流動性ひっ迫に対するバッファー(緩衝材)を設けることができている。

それでも米国主導の同盟体制やルールに基づく秩序、グローバル化の力といった、かつてドル資金を潤滑油として世界の経済と市場を機能させていた要素は、崩れつつある。過去1年で大規模な貿易紛争や政治的争い、軍事衝突が発生し、国際的な投資の世界は極めて危険な場所へと変貌している。

このような環境こそが、カリフォルニア大学バークレー校教授で国際資本移動と通貨の著名な専門家であるバリー・アイケングリーン氏が17日に新著「国境を越えるマネー:クロイソスから暗号資産までの国際通貨」を発刊する背景だ。

アイケングリーン氏は本書で、2500年にわたる通貨の歴史をたどり、システム上重要な通貨がどのように台頭し、次第に衰退していくのかを解き明かすとともに、ドルと暗号資産の将来についての見解も披露している。

同氏は、外貨準備や国際貿易、金融、決済において、卓越した通貨としてのドルに代わるライバルは依然として存在しないと主張しつつも、これまで「氷河」のように緩やかだったドル衰退の動きが、今後加速する恐れがあると懸念する。

「以前よりずっと心配だ。ドルにとって明らかな代替手段はなく、われわれはこれからの(ドルからの)移行が非常に緩やかで円滑に進むのを期待するほかない。だが事態がすんなりと進む世界に生きていないことも、われわれは学んでいると思う」という。

<デリケートな局面>

そして過去数日の展開はスムーズさとは程遠く、世界がなおどれほどドルを必要としているかが浮き彫りになった。

国際決済銀行(BIS)によると、全外国為替取引において片方にドルが入る比率は89%とここ25年で最も高い。次に取引されている通貨はユーロだが、全取引の片方になる比率は29%に過ぎない。

さらに国際決済取引におけるドルのシェアも約50%だ。米連邦準備理事会(FRB)の調査に基づくと、ユーロ圏内の決済を計算に入れると、ドルのシェアは60%前後に上昇する。国際的および外貨建ての銀行債権の約55%、債務の60%はドル建てとなっている。

原油取引に目を向けると、現在ユーロや人民元などドル以外の通貨建ては最大で2割なので、残る8割前後はドル建てを意味する。

アイケングリーン氏は、より多様な生態系が地球のためになるように、多極的な国際通貨・金融システムは世界にとってプラスになると長年信じてきたと話す。

しかし同氏は「われわれはまだ、国際的な流動性の面で他の要素が出現し、ドルの代役を務める地点に達していない。だから非常にデリケートな局面にある」と警告する。

貿易戦争や実際の戦争が激化している時期としては、同氏のその表現はむしろ控えめにさえ思われる。

(筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

免責事項:本サイトで提供する情報は教育・情報提供を目的としたものであり、金融・投資アドバイスとして解釈されるべきではありません。

おすすめ記事

KeyAI