
Joice Alves
[ロンドン 17日 ロイター] - 人工知能(AI)投資ブームの影響が欧州の外国為替市場にも波及し始めており、その恩恵が最も大きいのはスウェーデンクローナと英ポンドとみられている。
外為市場は今年、関税に関する懸念や米利下げ期待を背景としたドル安が取引を主導してきた。しかし目を凝らせば、株式市場を史上最高値へと押し上げたAIの影響が外為市場にも及んでいることが分かる。
JPモルガンによると、この数カ月のスウェーデンクローナSEK=と英ポンドGBP=の底堅い動きは、部分的にはハイテク、特にAIの効果による可能性がある。スウェーデンと英国はAI投資規模が際立っており、この流れが両通貨にわずかながらも追い風を与えているという。
米スタンフォード大のAIインデックスによると、英国とスウェーデンは昨年にAIへの民間I投資額がいずれも40億ドル超に達し、米国と中国に次いで世界第3位と第4位となっている。
クローナは年初来に対ドルで約15%上昇し、主要欧州通貨としては対ドルで最も堅調。英ポンドも対ドルで7%上昇した。
アナリストによると、為替相場には金利見通しや財政不安など他の要因も作用するため、AIの影響を正確に分析するのは難しい。
ただ、ラボバンクの外国為替戦略責任者ジェーン・フォーリー氏は「両国に対して大規模なAI投資が発表されている。そうした海外からの投資資金の流入がポンドやクローナへの需要を生み、結果として通貨の底堅さを支えている可能性があるのは間違いない」と話す。
クローナはユーロや他の北欧諸国通貨に対しても上昇している。一方、財政不安に悩まされている英ポンドは、ユーロおよびスイスフランに対しては下げている。
ラボバンクのフォーリー氏によると、スウェーデンのAI企業向け投資はクローナへの需要を高め、クローナにとって明確に上昇圧力をもたらす。一方、ポンドは元々取引量が非常に多いため、AI向け投資の影響が見えにくいという。
<大規模なAI投資>
英国と米国は先月、先端技術分野での連携協定に合意。マイクロソフトGBP=を筆頭とする大手米企業が英国に310億ポンド(約420億ドル)を投資すると約束した。
また米半導体大手エヌビディアNVDA.Oは、通信機器メーカーのエリクソンERICb.STや製薬会社アストラゼネカAZN.Lなどにデータセンタープラットフォームを提供する計画。さらにマイクロソフト、メタMETA.O、アルファベットGOOGL.O、カナダのブルックフィールド・アセット・マネジメントBAM.TOも、安定した電力供給と優れたインフラを理由にスウェーデンでデータセンターを建設する予定だ。
AIが経済成長や失業率にどのような影響を及ぼすか、あるいはそのことで財政負担が増えるのかを判断するのは早計とはいえ、こうした一連のAI投資計画の発表はクローナとポンドにとって好材料だとアナリストらはみている。
先に発表されたスウェーデンの金融大手SEBの報告書によると、外国為替市場における主要なスウェーデン勢のクローナ買い越しポジションは過去最高水準に接近していた。
ソシエテ・ジェネラルの外国為替・金利部門のコーポレートリサーチ責任者ケネス・ブルー氏は、米ハイテク企業による投資計画が、11月に予定されている英国の予算発表前の悲観的なムードを和らげ、増税が見込まれる中でもポンドの魅力を高める可能性があるとの見方を示した。
HSBCプライベートバンクのグローバル最高投資責任者(CIO)ウィレム・セルス氏も、英国に対する投資家心理は見た目よりも「前向き」だとして「その理由の一つは人々が英国をAI関連で比較的魅力的な投資先と見ているからだ」と指摘した。