
David Sherfinski
[リッチモンド(米バージニア州) 23日 トムソン・ロイター財団] - トランプ米政権は2期目発足からの1年間で、気候変動や環境に関する政府の情報発信方法を根本的に転換し、政権の意に反する意見や証拠の公開を制限、もしくは完全に削除しつつある。
連邦政府の資料から気候変動、環境正義への言及は系統的に削除され、トランプ大統領の政策と矛盾したり、その政策を弱体化させる可能性があったりする長年のデータや情報へのアクセスは遮断、ないし消去されている。
この影響が及ぶ範囲は幅広く、政権の残りの任期中に統制が一段と強まってもおかしくない。
連邦政府の環境データを保存し、公共へのアクセスを可能な状態に保つ目的で結成された連合組織「公共環境データ・パートナーズ」で働くジョナサン・ギルモア氏は「(政権の)政策方針に一致しない科学は封じ込められ、政策方針を支持するためにしばしば、歪曲や誤りを含む研究結果が推奨されるという認識がある」と嘆く。
トランプ氏自身、気候変動を「詐欺」と一蹴し、政権は閉鎖された石炭火力発電所の再稼働、石油・天然ガス生産再拡大、風力や太陽光といった再生可能エネルギーに対する税制優遇措置の廃止などを矢継ぎ早に打ち出してきた。
ギルモア氏は「政府の内外で起きていることをあいまいにして、科学者を沈黙させ、世界や公衆衛生、われわれの周囲の環境について教えてくれるデータの流れを遮断する行為は、民主主義の前提自体を損なう」と苦言を呈した。
その上で「われわれは安全性が低下し、より不健康になるとともに、自分たちの生活や生計に対するリスクを理解できなくなるのではないかとの不安がある」と話す。
<人為的要因を削除>
政権による直近の動きとして、環境保護局(EPA)が2025年12月にオンライン上の掲載資料から「人為的要因による」気候変動への言及をひそかに削除し始めたと報じられた事案が挙げられる。
連邦政府の環境情報公開を監視し、サイト内容の変更を追跡する国際的ネットワーク団体「環境データ&ガバナンス・イニシアチブ」のイジー・パチェンツァ氏は、EPAがサイトから約80ページを削除しており、その多くが気候変動の原因と影響に関する内容だったと述べた。
パチェンツァ氏は「現在も閲覧可能な特定ページから消されたのは、気候変動の人為的要因に言及した非常に的を絞った情報だった。例えば気候変動の原因に関するEPAのページは現在も公開されているが、人為的要因による気候変動が自然現象では説明できないとされた部分は削除され、残った情報は全て地球の気候変動の自然的原因についての部分だけだ」と説明する。
「自然の気候変動」または「自然変動」への言及が、地球温暖化の危険性を過小評価する少数の反主流派によってなされ、7月にエネルギー省が公表した報告書で頻繁に見られる。
EPAの報道官は、同局はもはや「気候カルトからの命令には従わない」と述べた。「トランプ政権下のEPAは、最高水準の科学、完全な透明性、法に基づく義務の履行を重視している。これらの基準を満たさない従来のウェブサイトはアーカイブされ、一般に公開されている」
政権は、被害額10億ドル以上の自然災害のデータベースに新規情報を追加する作業も停止した。
また通常4年ごとに発行され、議会が義務づけた地球の気温上昇に対する人為的影響を記録する報告書「国家気候評価」のオンライン上の一般公開も制限されている。
パチェンツァ氏は「私が学んだ最も大きな点は、連邦政府のウェブサイトで起きている変化に必ずしも筋の通った理由や規則性は見出せないということだ」と述べつつも、事実の「的を絞った削除」は信頼喪失につながると訴えた。
<対抗策>
ギルモア氏は、こうした危機において環境コミュニティーは、本来ならそうならなかった形で動くことを強いられたと明かす。
「それはより多くの意見交換や、資金提供者からの活力と注目が改めて集まることを意味する。われわれはこれらの非常に大きな問題に取り組み、向き合い、互いに関わり合って、明らかに機能してこなかったこのシステムを再構築する方法を考えることができる」と語った。
気候研究グループ「クライメート・セントラル」は今月、10億ドル規模の独自の災害データベースを公開。公共環境データ・パートナーズに属する民間企業フルトン・リングも25年、同じようなデータベースを公開した。
ギルモア氏によると、消失した完全なデータセットの絶対数は比較的少ないかもしれないが、専門的人員の削減も深刻な打撃をもたらしているのではないかと懸念される。
政権が連邦政府職員の削減を進める中で、失職した多くの気候問題専門家は補充されず、彼らの知識基盤も失われた。
ギルモア氏は「データセットを支える人的基盤が減らされ、異動を迫られ、威圧されているのが現状だ。その影響は下流に及び、われわれにはまだ理解すらできていない。担当部門全体が空洞化しているため、多くの優れた研究が実行されないだろう」と述べた。
<なくなる重要政策手段>
25年に、国家気候評価に対する貢献はもう必要ない、と告げるメールを受け取ったことを思い返すのは、非営利の「憂慮する科学者同盟」に属するレイチェル・クリートゥス氏だ。
1990年に始まった国家気候評価は、27年に第6次報告を公表する予定だったが、トランプ氏が予算を減らし、報告書を執筆していた専門家が25年に解雇されたため、作業は停止してしまった。過去の報告書を掲載していたサイトも閉鎖された。
クリートゥス氏は「この種の科学、つまり本当にわれわれに必要な科学は、政治的でも党派的でもない」と強調する。
同氏は「国家気候評価は政府と民間が気候変動に備えるための重要な政策手段になってきた。これは事実に基づいた情報で活用が可能だ。それを打ち切るのは全く不当な行為と言える。全世界がわれわれを見ており、この政権は世界の科学事業の至宝を破壊しつつある」と批判した。