Jennifer Saba
[ニューヨーク 30日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米メタ・プラットフォームズMETA.O と米マイクロソフトMSFT.O は人工知能(AI)戦略で2つの異なる道を進んでいる。AI支配を目指して数百億ドルを投じているのは共通するが、その支配的地位をどう活用するかの構想が異なる。マイクロソフトの強みが企業向けビジネスなのに対し、メタの収入は主に消費者向け事業を手がける広告主企業によるものだ。両社の株式時価総額を見比べる限り、軍配はマイクロソフトに上がりそうだ。
両社にとって、AIの重要性はいくら強調してもし過ぎることがない。メタのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は30日、第2・四半期(4―6月)決算発表の数時間前に「超知能」の将来に関する「マニフェスト」を発表した。そのメッセージは明確だ。いわく、他社はAIについて、仕事を自動化して人間を「AIの生産物の施しを受ける」存在にする手段だと見ているかもしれないが、メタは「あなたが目標を達成し、世界で見たいものを創造し、あらゆる冒険を体験し、大切な人にとってより良い友人となり、理想の自分へと成長する」ことを支援したい、と語っているのだ。
これは職場用ソフトウエアに重点を置くマイクロソフトを暗に皮肉ったものと見られる。マイクロソフトは1カ月前に公表したリポートで、電子メールの処理に負われるオフィス事務を整理することの重要性について説明していたからだ。
ザッカーバーグ氏が、広告収入で運営されるフェイスブックやインスタグラムなどのソーシャルメディアによって「帝国」を築いてきたことを考えれば、マイクロソフトとの違いを強調するのは同氏の利益に叶う。メタは事業多角化に苦心している。広告収入ベースではない唯一の事業と言っていい仮想現実(VR)・ウエアラブル端末部門「リアリティー・ラボ」は第2・四半期に45億ドルの赤字を出した上、来年はAI人材採用の強化に伴いコストが増えるとの見通しを示した。またBreakingviewsの分析によると、メタの時価総額の約80%はフェイスブックとインスタグラムからもたらされている。
マイクロソフトは違う。サティア・ナデラCEOも30日に第4・四半期(4─6月)決算を発表したが、こちらは企業による商品やクラウドサービスのサブスクリプションが中心だった。通年では、AIブームを支えるサーバープラットフォームの売上高が34%増えて750億ドルに達した。直近の四半期では増収ペースがさらに39%に加速している。
企業顧客は離反しにくい。切り替えコストが高く、技術による効率化を追求するからだ。モルガン・スタンレーのアナリストによる調査では、企業の最高情報責任者(CIO)の60%が今年末までに生成AIベース作業のオンライン化を計画している。
メタとマイクロソフトの株式時価総額の格差が拡大していることは、投資家がこうした動向に敏感であることをうかがわせる。企業向け事業に集中するマイクロソフトとソフトウエア開発大手オラクルORCL.Nはいずれも、向こう12カ月の予想利払い・税・償却前利益(EBITDA)に基づく株価収益率(PER)が、オンライン小売りのアマゾン・ドットコムAMZN.Oや、広告収入に依存するメタおよびグーグルの親会社アルファベットGOOGL.Oをしのいでいる。つまり、「AI硬貨」のコイン投げで買ったのはマイクロソフト側のようだ。
●背景となるニュース
*メタ・プラットフォームズが30日に発表した第2・四半期(4―6月)決算は、売上高が前年同期比22%増の475億ドル、純利益が36%増の183億ドルだった。nL6N3TR160
*マイクロソフトが同日発表した第4・四半期(4―6月)決算は、売上高が前年同期比18%増の764億ドル、純利益が同24%増の272億ドルだった。nL6N3TR135
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)