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〔GRAPHIC〕ドルが予想外の反発、「反トランプトレード」は終了か

ロイターAug 1, 2025 5:11 AM

Naomi Rovnick

- トランプ米大統領の関税措置と債務増大政策により、ドルと米国株に長期的な痛みがもたらされるという投資家の確信が崩れており、このシナリオに支えられてきた欧州と新興国市場全体が痛手を被る可能性が出てきた。

 ドルは今年に入り、1973年以降で最大の下げ率を記録したが、7月は今年初めて月間で上昇した。これは米連邦準備理事会(FRB)が利下げに抵抗し、国内総生産(GDP)統計が予想外に強く、貿易戦争を巡る不安が和らいだことが背景にある。

 投資家によると、これにより「米国以外トレード」(米国以外の市場の上昇を見込む取引)がリスクにさらされている。このトレードは米国資産への信認が危うくなるとの見解に基づくものだが、バークレイズの分析によれば、下げるドルへのエクスポージャーを減らしたいという投資家の欲求が主な原動力となっていた。

 ピクテ・アセット・マネジメントのマルチ資産共同責任者、シャニエル・ラムジー氏は「ドルと米資産の下落を見込む取引は、市場で最も大きなポジションのひとつになっている」と指摘。同氏はドル投資を「実質ゼロ」にしていたが、米経済が欧州をしのぎ始めるとの期待から、今後は増やす構えだと話した。

 同氏は、ドルが全面的に回復し、2025年に入ってからの大きな市場トレンドが止まるかもしれないと言う。

 30日に終わった連邦公開市場委員会(FOMC)により、利下げ期待は薄れた。一部投資家は、FRBは関税由来の輸入コスト増が消費者物価インフレに及ぼす影響を抑えるために、ドル相場の回復を支持しているのかもしれないと指摘している。

<ドル反発>

 欧州のSTOXX株価指数.STOXXは1―3月、米国株に対して過去最大のアウトパフォーマンスを記録した。31日寄り付き前の段階では年初からの上昇率が8.4%と、米S&P500種指数.SPXの8.1%上昇をわずかにしのぐ状態だ。

 バンク・オブ・アメリカの調査によると、7月半ばまでは世界的な資産運用会社の間で最も取引が集中していたのはドル下落に賭けるトレードだった。

 その規模は180億ドルに達したが、今月1ユーロ=1.1789ドルまで上昇したユーロEUR=EBSがFOMC後に1.1401ドルに下げたことで、この取引は困難に直面している。

 今年前半のユーロの上昇率は、26年前のユーロ誕生以来で半年として最高を記録した。しかし7月はドルに対する月間下落率が2023年5月以来で最大となった。

 またMSCIのアジア新興国株式指数.MIMS00000PUSは31日に2週間ぶりの低水準となり、新興国全体のMSCI為替指数.MIEM00000CUSは7月、今年初めて月間で下落した。

 エドモン・ドゥ・ロスチャイルド・アセット・マネジメントのマルチ資産責任者、マイケル・ニザード氏は「米国株に資金が戻っており、為替市場でも市場モメンタムにおいても循環が起こっている」と話した。

 同氏は、こうした潮目の変化の最大の原因が米国と欧州連合(EU)による27日の関税合意にあると指摘。足元の基調が年末まで続くとは予想できないため、1ユーロ=1.14ドル水準でユーロを買うと付け加えた。

 これに対し、リバー・グローバルのポートフォリオマネジャー、ベッティナ・エドモンドストン氏は、ドル高は米インフレを抑制するため、利下げをしないという新手の「FRBプット」がドルを支え始めたのかもしれないと指摘する。FRBプットとは、相場が下落するとFRBが金融政策によって支える動き。

 エドモンドストン氏は「私は金利低下を予想していない。そうなると直感的にドルは上昇するはずだ」と話した。

<回復は一時的か>

 欧州資産運用最大手アムンディの幹部モニカ・ディフェンド氏は、トランプ氏の債務計画とFRBの独立性に対する執拗な攻撃により、ドルが長期的に下落するとの見方を変えていない。

 ただ、今後も一貫して「米経済成長率が予想外に上振れすれば」、見方を変える用意はある。「米国は今後も『例外』であり続けるかもしれない。おそらくマクロ経済面においてではなく、株式市場において」と同氏は語った。

 ナットシェル・アセット・マネジメントのマーク・エリス最高投資責任者(CIO)は、ドルと米国株が8月も足並みをそろえて上昇し続けるとの確信は無いと話す。8月は例年、1年で最も相場が荒れやすい月の1つだ。

 エリス氏は「今週末ごろはリスクオフにする好機だ。例年の夏の波乱と下落に備え、もっと安全なポジションを組む」と話した。

 一方、バークレイズの欧州株ストラテジー責任者、エマニュエル・カウ氏は30日の顧客向けノートで、市場の支配的ムードのバローメーターとされるトレンド追随型ヘッジファンドCTAが米国債売りのポジションを閉じるとともに、欧州株投資を減らしていると指摘。今後ドルの反発が持続すれば、グローバル投資家にとって「主要なペイントレード(大多数の予想と反対方向に相場が動き、多くの人が損失を被る取引)」がもたらされると予想した。

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