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COLUMN-〔BREAKINGVIEWS〕パウエル氏の様子見姿勢、内外から反対論でも妥当性変わらず

ロイターJul 30, 2025 11:43 PM

Gabriel Rubin

- 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長の政策運営姿勢は今、組織の内部と外部の両方から反対意見にさらされている。30日に終了した連邦公開市場委員会(FOMC)では、政策金利据え置き決定に対して2人のメンバーが利下げを主張して異を唱えた。FOMCの採決に反対者が2人も出たのは30年ぶりだ。そしてトランプ大統領は相変わらず、猛烈な勢いで利下げを迫っている。

 しかしパウエル氏の足場が弱まったからといって、少なくとも当面は様子見に徹するという同氏の考えが間違いというわけではない。貿易戦争の影響が実感され始め、新たな緊張も生じてきた中で、物価の先行きは現実的なリスクに直面しており、慎重な政策運営はどうやっても難しさを抱えてしまう対応手段のうちでは一番ましだ。

 パウエル氏が会見を開いた数時間前には第2・四半期の米国内総生産(GDP)速報値が発表された。特徴的なのはモノの輸入が30%も急減し、在庫が縮小に転じたことだ。これは関税引き上げ前の駆け込みで輸入と在庫が大きく膨らんだ前期の裏返しだった。だが個人消費の伸びは1.2%と前期の半分に鈍化し、企業設備投資はマイナスに沈んだ。まさにアニメ「ザ・シンプソンズ」に登場する「スリートゥージズ症候群」のように、複数の悪材料同士が互いに干渉して影響を打ち消し合う構図になっている。

一方、トランプ氏はインドに25%の関税を課すと述べ、ブラジルに適用する関税を引き上げた上に、輸入される銅に50%の関税を打ち出した。このため、なお輪郭は不明瞭ながらも、トランプ政権が日本および欧州連合(EU)と関税交渉で合意に至ったことに伴う安心感はしぼんでしまった。特に米国にとって10番目に大きな貿易相手のインドとの協議がまとまらなかった点は、トランプ氏が4月に発表した「相互関税」のある程度の部分が存続する可能性を物語る。

 トランプ氏が高関税を適用しようとする理由は、ロシア産原油を購入している、あるいはブラジルの場合は前大統領をクーデター未遂で訴追した、など非常に多岐にわたる以上、猶予措置が講じられる公算は乏しい。米企業にとってその負担は顕現化しており、フォード・モーターF.Nは30日、第2・四半期の関税コストを8億ドルと算定した。輸入自動車部品への幅広い課税だけでなく、米国産のアルミニウムを調達しなければならないことも痛手だ。

 パウエル氏は、関税に起因するショックが持続的な物価上昇につながるリスクを暗示し、消費者のインフレ期待上昇の原因になると指摘した。とはいえ同氏が任期満了となる来年5月が近づくにつれて、そうした明白な警戒信号を無視しろという大統領からの圧力は過去半世紀のいかなるFRB議長が経験してきたよりも強まる。経済成長と雇用動向はこの警戒信号とは矛盾する形でそれなりにしっかりしているだけに、政策のかじ取りも今後の予測も余計困難になる。それでもこのような障害物につまずいて転ぶより、じっと動かずにいる方が理にかなっている。

●背景となるニュース
*FRBは30日に終了したFOMCで政策金利を4.25-4.5%に据え置くことを決めたが、30年ぶりにFOMCメンバーのうち2人が反対票を投じた。nL6N3TR0YG


*トランプ大統領は30日、インドからの輸入品に対して8月1日以降25%の関税を課すと述べた。ホワイトハウスは輸入される銅への50%の関税と、ブラジルに適用する関税の引き上げも発表した。nL6N3TR0T0 nL6N3TR12Z


(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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