
TradingKey - 2025年、世界の主要中央銀行は全体として緩和姿勢を維持したものの、政策ペースは著しく減速した。インフレが徐々に抑制され、経済回復に初期的なレジリエンス(耐性)が見られる中、多くの先進国では大幅な緩和からより慎重な調整段階へと移行しており、金融環境は激しい刺激から中立的な水準へと徐々に転換しつつある。回復モメンタムの強化と外部の不確実性が併存する複雑な状況下で、各国中銀は政策運営の持続可能性に一層注目し、成長の安定化とインフレ抑制の間に新たなバランスを見いだそうと努めている。
2025年末の分岐点に立ち、市場の関心は2026年に向けられている。緩和サイクルが終盤に差し掛かる中、世界の金融政策はどのように進化するのか? 各国中銀は新たな段階の金利方向をどう調整するのだろうか?
2025年第3四半期終了時に、FRBは8か月にわたる政策観望期を終え、漸進的な利下げサイクルを開始した。9月から12月にかけて3回連続で政策金利を25ベーシス・ポイントずつ引き下げた。
日付 | 調整幅(ベーシス・ポイント) | 調整後金利帯 | 説明 |
|---|---|---|---|
2025-12-10 | ↓ 25ベーシス・ポイント | 3.50% - 3.75% | 3回連続の利下げ。雇用減速・インフレ低下を受け、当局は慎重姿勢を維持 |
2025-10-29 | ↓ 25ベーシス・ポイント | 3.75% - 4.00% | 2回目の利下げ。経済成長鈍化+政府機関閉鎖によるデータ欠落で政策不確実性上昇 |
2025-09-17 | ↓ 25ベーシス・ポイント | 4.00% - 4.25% | 年内初の緩和サイクル開始。雇用の弱まり・活動減速が顕在化、ただしインフレは目標を上回る |
12月のFOMC会合では、12人の投票委員のうち3人が反対票を投じ、この意見の分かれ具合は2019年以来の最高水準となった。さらに注目すべきは、FRBのドット・プロットが示す2026年の利下げ経路予測が9月と比べてさらに分散している点だ。
一方、FRBは最新声明で以下の重要なシグナルを発した:
パウエル議長は記者会見で、このバランスシート操作は流動性調整ツールであり、伝統的な量的緩和(QE)の再開ではないと強調した。
2026年見通し:利下げが主軸か
市場は2026年にFRBがさらなる緩和を進めるとの見方を共有している。ウォール街の大手投資銀行の予測は概ね一致し、ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー、バンク・オブ・アメリカ、ウェルズ・ファーゴ、野村證券、バークレイズはいずれも2026年に50ベーシス・ポイントの利下げ(3月と6月が中心)を予想し、目標レンジは3.00%~3.25%に低下すると見ている。シティグループはさらに積極的に、年間75ベーシス・ポイントの利下げで2.75%~3.0%に到達すると予測。JPモルガンとドイツ銀行は慎重姿勢で25ベーシス・ポイントの利下げのみを予想。HSBCとスタンダード・チャータードは2026年に金利を維持すると見ている。マッコーリー銀行は独自の見方を示し、2026年第4四半期に利上げもあり得ると指摘。

FRB内部の意見分岐
FRB当局者の発言を総合すると、金利低下トレンドは概ね確立されるものの、実施経路を巡って激しい内部対立が存在することが明確だ。ボスティック氏やグールズビー氏を代表とするハト派陣営は行動の延期を主張。コアインフレの粘り強さと関税政策の将来の不確実性を理由に、安易な利下げを避けるべきだと強調。一方、ミラン氏やウォーラー氏を代表とするハト派は「早期利下げ」を主張し、労働市場の弱さに対し迅速な政策対応が必要だと指摘。
市場の焦点は「利下げするかどうか」から「いつ開始し、年間で累計どれだけ下げるか」へと明確にシフトしている。特に重要なのは12月の雇用統計で、失業率が上昇し続ければ1月または4月の利下げ開始確率が高まる。逆にデータがレジリエンスを示せば、緩和の窓は2026年半ば以降にずれ込む可能性がある。
会合日 | 調整幅(ベーシス・ポイント) | 調整後金利(%) |
|---|---|---|
2025-12-18 | 0 | 2.15% |
2025-06-05 | ↓ 25ベーシス・ポイント | 2.15% |
2025-04-17 | ↓ 25ベーシス・ポイント | 2.40% |
2025-03-06 | ↓ 25ベーシス・ポイント | 2.65% |
2025-01-30 | ↓ 25ベーシス・ポイント | 2.90% |
2025年12月の金融政策決定会合で、ECBは主要金利を据え置き、預金金利を2.15%で4回連続維持した。この決定は市場の予想通りで、現行の金融政策が「適切な水準」にあるとの判断を反映している。
短期的に利上げに急ぐ必要はないものの、ユーロ圏経済とインフレの二重リスクが蓄積しつつあることに注目する分析が増えており、将来的に金融政策を引き締める余地が広がっている。最近のユーロ圏経済データが潜在的な成長力の強まりとインフレの安定化(場合によっては上昇)を示していることを受け、多くの専門家はECBが緩和姿勢を放棄し、より中立的な政策スタンスへと徐々に転換すると予想している。
2026年見通し:据え置きが主旋律か
来年に向け、主要投資銀行は「重要な変数に変化がなければ、ECBは2026年の大部分で現行金利を維持する」との見方を共有している。全体として降息サイクルはほぼ完了し、「観察期間」に入ったと解釈できる。
ゴールドマン・サックスは、「インフレが大幅に低下しない限り、ECBは2026年通年で預金金利を2%で維持する」と予想。同社アナリストは「インフレは目標レンジに近づき、ドイツが財政拡張政策を実施し始めたことを考慮し、金利は2%で維持される。インフレが著しく低下した場合のみ追加利下げを検討する」と指摘。
シティグループはさらに慎重で、ECBが2%の金利水準を2027年末まで維持すると予測。中期的なインフレの粘り強さへの懸念を反映している。
主流予想とは異なり、モルガン・スタンレーは市場がECBが直面する今後の利下げ圧力を過小評価していると指摘。ユーロ圏経済の持続的低迷、インフレが政策目標を下回り続ける可能性、財政刺激の余地が限られていることの3要因がECBを再び緩和路線に追い込むと分析。2026年前半に預金金利を1.50%に引き下げ、その後もこの水準を維持すると予想している。
総合すると、ECBは現在、微妙だが重要な転換点に立っている。一方で経済変化に応じて適宜緩和シグナルを発する可能性を完全には排除せず、他方で過熱リスクや財政拡張が物価動向に与える不確実性への警戒を高めている。
したがって短期的には現行政策を維持することが、成長と物価安定のバランスを取る上で最も安全な選択肢だ。長期的には、物価上昇圧力が再び高まるデータが続く場合、ECBが中期内に利上げを再開し、構造的なインフレ上昇への対応を強化する可能性も排除できない。
2025年、英国中銀は「段階的緩和」を基調とする金融政策を実施した。年4回の利下げ(計100ベーシス・ポイント)で政策金利を年初の4.75%から年末の3.75%に調整した。全体的な方向性は緩和だが、ペースと表現からはますます慎重な姿勢が読み取れる。
決定日 | 調整幅(ベーシス・ポイント) | 調整後金利(%) |
|---|---|---|
2025-12-18 | ↓ 25ベーシス・ポイント | 3.75 |
2025-08-07 | ↓ 25ベーシス・ポイント | 4.00 |
2025-06-19 | 0 | 4.25 |
2025-05-08 | ↓ 25ベーシス・ポイント | 4.25 |
2025-03-20 | ↓ 25ベーシス・ポイント | 4.50 |
年間を通じたペースを見ると、英国中銀は「上下半期とも2回の利下げ」という戦略を採用したが、利下げ間隔は明らかに長期化した。上半期は2月から5月まで3か月間隔だったのに対し、下半期は8月から12月まで4か月間隔となった。
年末利下げ:インフレ緩和と経済低迷の二重効果
英国中銀は12月に4回目の利下げを決定し、金利を3.75%に引き下げ、3年ぶりの低水準を更新した。11月のCPI上昇率は依然2%の目標を上回っていたが、3.2%まで大幅に低下し、8か月ぶりの低水準を記録した。この背景には食品価格インフレの低下が大きく寄与している。
緩和決定を後押ししたもう一つの要因は、国内経済の基盤が持続的に弱体化していることだ:
アンディ・ベイリー総裁は「現在のインフレ低下は予想より速く進んでおり、金融政策にさらなる操作の余地をもたらしている」と指摘したが、「将来の不確実性は依然として大きく、次回の政策判断は経済データに基づいて動的に評価される」と強調した。
2026年見通し:政策緩和はより慎重に
多くのデータが物価上昇圧力の低下を示しているにもかかわらず、英国中銀は最新声明で「追加利下げが必要かどうかの判断はますます複雑になる」と明記。この表現は、現時点での金融刺激効果が「安全限界」に近づいており、今後の決定ハードルが高まっていることを示唆している。
さらに委員の多くは、中期内にインフレが目標に戻る可能性が高く、追加緩和はかえって市場の安定を損なう可能性があると指摘。異なるリスクのバランスを取る上での高度な警戒の必要性を強調している。トレーダーは、来年末までに英国中銀が最大39ベーシス・ポイント(1~2回の小幅利下げ)の緩和余地を残すと予想している。
市場は、英国中銀が2026年に慎重な緩和ペースを維持すると見ているが、実施タイミングは経済データ次第だ。
ゴールドマン・サックスは「マクロ環境が安定し、インフレが継続的に低下し、賃金上昇圧力が管理可能であれば、英国中銀は2026年第3四半期までに3回の利下げ(3月・6月・9月、各25ベーシス・ポイント)を実施し、年間累計75ベーシス・ポイントの利下げで政策金利を約3%へ、場合によっては2.30%近辺の下限領域にまで低下させる」と予想。
ドイツ銀行は「インフレが顕著に低下した後、依然として高い実質金利が需要を抑制している」と指摘し、2026年もさらなる金融緩和の余地があるとし、複数回の利下げ継続を予想。
バークレイズは「昨年11月のインフレ急低下後、政策転換の主要障壁は解消された」とし、中期的な適正金利レンジは2.8%~3.0%にあると明確に位置付け。この水準が英国の現在の構造的経済環境に合致する「新たな底辺」となると分析。
一方、JPモルガンの英国首席エコノミスト、アラン・モンクス氏は「雇用市場が低迷し、賃金上昇率が緩やかに低下し続ければ、英国中銀が今後数か月で再び行動する可能性がある」とし、基本シナリオとして3月末と6月末の会合で小幅利下げを各1回実施し、年末金利を3%近傍にするとの見方を示した。
モルガン・スタンレーは次回の政策変更が2月会合で起きる可能性が高いと予想し、「失業率がさらに上昇し、賃金上昇率が低下すれば、金融政策は小刻みに引き下げられ続ける」と指摘。内部モデルでは年間で最大2~3回の緩和窓があり、その際にはより慎重な表現を用いて外部の期待をコントロールすると予想している。
日本銀行は2025年、『超緩和』金融政策から『緩やかな利上げ・段階的正常化』へという歴史的な転換をほぼ完了させた。年末の政策金利は0.75%に達し、30年ぶりの高水準を記録。日本は長期にわたるゼロ金利時代に完全に別れを告げた。
全体的な基調は「慎重な前進」だが、当局は「構造的なインフレ・賃金上昇トレンドに対応するため、利上げ路線を堅実に推進する」と明確に強調している。
決定日 | 調整幅(ベーシス・ポイント) | 調整後金利(%) |
|---|---|---|
2025-12-19 | ↑ 25ベーシス・ポイント | 0.75 |
2025-01-24 | ↑ 25ベーシス・ポイント | 0.50 |
1月に日本銀行が正式にマイナス金利政策を終了し、政策金利を0.50%に引き上げた後、以降の会合では大半を据え置き、基礎的なインフレが緊縮サイクルを支えるに足るか継続的に評価した。12月会合では再び25ベーシス・ポイント利上げを実施した。
日本銀行の経済見通しは慎重な楽観を示している。2025年度の実質GDP成長率見通しは0.7%程度に上方修正された。背景には企業設備投資の持続的回復、消費の穏やかな回復、サービス業の堅調なパフォーマンスがある。
ただし、当局は地政学的緊張の高まり、主要貿易相手国の経済成長鈍化、エネルギー価格の変動などの外部リスクが依然として存在すると明確に指摘している。
インフレに関しては、日本銀行は今後数年間でコアCPIが概ね2%の目標付近で推移すると予想。これは日本がインフレ目標を達成した重要な証左と見なされている。一方で「国内需要が著しく弱まれば、あるいは世界的なコモディティ価格が大幅に下落すれば、インフレが再び目標を下回る可能性がある」との警告も発している。
2026年見通し:緩やかな利上げ路線が継続
日本の中長期的な金融政策を巡り、複数の機関は日銀が「半年に1回」のペースで小幅利上げを継続すると予想している。世界の主要経済体の中で最も強い意志を示すものの一つで、進みは遅くても方向性に疑いの余地はない。
バンク・オブ・アメリカの分析は「日本銀行が物価・賃金の持続的上昇を確認した後、2026年6月に再び利上げを実施し、以後半年ごとのペースで最終金利目標を1%に設定する」と予想。この慎重なメカニズムは「回復の活力と金融条件の安定のバランスを取り続ける上での不確実性の多さ」を反映しているが、現時点での緊縮プロセス停止を正当化するものではない。このペースで進めば、東京は今後2年間で3回の小幅利上げを実施し、2027年1月と7月にも各1回ずつ実施し、年末には1.5%の目標水準を達成し、「かつてないほどの長期緩和の逆転」を完了すると予想している。
ゴールドマン・サックスの日本首席エコノミスト、太田智弘氏も同様の見方を示す。「今回の緊縮は典型的なインフレ抑制ではなく、デフレの影を完全に払拭し、市場のシグナル伝達メカニズムを回復させるという構造的再構築戦略だ」と指摘。次回の利上げは来年7月頃になると予想し、最終的なピーク金利も1.5%近傍になると分析。この見方は、予想可能な期間内で日本が「内生的回復」を通じて実質・名目金利の転換点を生み出す数少ない国の一つになる可能性を示唆している。
総括すると、2025年は日本銀行にとって歴史的な年となった。日本当局がかつてない規模で国内の金融正常化改革を推進し、超緩和からの離脱が基本的合意となっている。
世界の投資家にとって、日本銀行の金融政策正常化は「世界最後の主要緩和金融政策の砦」が消失することを意味する。これはグローバルな資本フロー、為替市場、資産価格に深い影響を及ぼすだろう。特に円が伝統的な調達通貨としての地位を再構築する可能性があり、グローバルなキャリートレード戦略の再評価が必要となる。
2025年第3四半期まで、インフレの低下と雇用市場の軟化を背景に、豪州準備銀行(RBA)は穏やかな緩和サイクルを開始した。2月から3回(各25ベーシス・ポイント)の利下げを実施し、累計75ベーシス・ポイントの引き下げで、現金利子率を4.10%から3.60%へと低下させた。
決定日 | 調整幅(ベーシス・ポイント) | 調整後金利(%) |
|---|---|---|
2025-12-09 | 0 | 3.60 |
2025-08-12 | -25 | 3.60 |
2025-07-08 | 0 | 3.85 |
2025-05-20 | -25 | 3.85 |
2025-02-18 | -25 | 4.10 |
しかし下半期に入りインフレに再上昇の兆しが見られたため、RBAは利下げを停止し、その後の政策会合でも金利を据え置き続けている。市場の追加利下げ予想も急速に低下し、現在では金利市場および多くのエコノミストが緩和サイクルが終了した可能性が高いと見ている。
12月の金融政策決定では、ミシェル・バロック総裁が「国内の物価上昇圧力が予想より高止まりしており、労働市場も引き締まりを維持しているため、『相当長い期間』現行金利を維持する必要がある」と明言。金融政策が刺激から観望へと転換していることを示した。
2026年見通し:利上げ予想が高まる
12月のRBA会合議事録では、理事会メンバーが2026年の利上げ可能性について議論したことが明らかになった。高インフレが経済に及ぼすリスクが増大しているためだ。
12月中旬には、オーストラリア・コモンウェルス銀行(CBA)とオーストラリア・アンド・ニュー・ジーランド銀行(ANZ)が相次いで最新予測を発表。両行ともRBAが2026年2月から新たな利上げサイクルを開始し、持続的な物価上昇圧力に対応すると予想している。
CBAのエコノミスト、ベリンダ・アレン氏は「2026年に現金利子率を1回引き上げ、3.60%から3.85%に上昇する」と予測。さらに「経済活動が予想を上回り、賃金・サービス関連インフレが強く推移すれば、より包括的な利上げサイクルに入る可能性もある」と補足した。
ANZの最高エコノミスト、サリー・オールド氏はよりハト派的な姿勢を示し、RBAが来年2月と5月に25ベーシス・ポイントずつの利上げを実施し、年末までに目標現金利子率を4.10%に引き上げると予想。この見方はシティグループの最近の分析と高度に一致しており、同社は「コア物価が粘り強く推移すれば、市場は将来の引き締めリスクを大幅に過小評価している可能性がある」と警告している。
世界の金融政策の分断は、世界経済構造の深い変化を反映している。各国中銀が同期的行動を止め、自国の実情に最も適した政策経路を個別に模索する中で、グローバル金融市場のボラティリティは高まる可能性がある。しかし同時に、準備の整った投資家にとっては差別化された機会を生み出す源泉ともなるだろう。
ウォール街であろうと東京湾畔であろうと、フランクフルトであろうとロンドンシティであろうと、東京の銀行街であろうとシドニーの議事堂であろうと、どの国も「完璧なシナリオ」を有していない。だがまさにその中で、トレンド変化に対する鋭い嗅覚とリスク管理能力が、この変動の多いサイクルで優位性を獲得するための鍵となるだろう。