Noel Randewich Lewis Krauskopf
[11日 ロイター] - 今年の米株式市場は「AIトレード」を追い風に過去最高値を更新している。10日の取引ではオラクルORCL.Nが36%急騰。AIトレード熱が再び高まっている。
オラクルは、複数のAI企業から大型のクラウドサービス契約を受注したことを明らかにした。時価総額は9220億ドルに達し、イーライリリー、JPモルガン・チェース、ウォルマートを抜いた。
オラクル、ブロードコム、パランティアなど今年のテック株の急騰は、過熱感への警戒はあるものの、AI関連株が依然として市場の主役であることを示している。
一方、これまで強気相場をけん引してきた「マグニフィセント・セブン」は、アップルやテスラが値下がりするなど、失速している。
チェース・インベストメント・カウンセルのピーター・タズ社長は「AIや関連インフラの成長が鈍化するとの懸念が出始めていたが、オラクルの数字がサプライズとなったことで、再び注目を集めている」とし「AIトレードが再び主導権を握りつつある兆候といえる」と述べた。
オラクルは現在、時価総額上位10銘柄の一角を占める。上位10社はほぼ全てがAIのリーダー的存在で、エヌビディア、マイクロソフト、アルファベット、アマゾンなどが含まれる。
エヌビディアは今年、マイクロソフトやアップルに代わり、時価総額が世界史上最大となった。先月下旬に公表した業績予想が市場の期待に届かず、株価は一時2%下落したが、11日時点でも時価総額4兆3000億ドルを維持している。
テック株全体も、8月に警戒感から一時売りが出たものの、その後は持ち直し、年初来で16%以上の上昇を記録している。
オラクルの時価総額は、10日の急騰を受けて9220億ドルに達した。バークシャー・ハサウェイBRKb.Nの1兆0600億ドル、テスラTSLA.Oの1兆1200億ドルに迫っている。
オラクルは9日、4件の大型契約を発表。競争激化で巨額投資を進めるオープンAIやxAIなど、AI業界の波に乗った。
S&P500指数では、オラクルやブロードコムなどAI関連の時価総額上位8銘柄が指数全体の30%近くを占めている。
同指数は年初から11%上昇しているが、ロイターがLSEGのデータを基に算出したところによると、上昇分の約半分はエヌビディア、マイクロソフト、ブロードコム、メタ・プラットフォームズ、アルファベット、アマゾン、パランティア、オラクルの値上がりによるものだ。
過去5営業日の取引データでは、取引高上位10銘柄のうち、アップルを除く9銘柄がAI関連株だった。首位はエヌビディアで、1日当たりの平均取引高が290億ドルだった。
AI株の熱狂はテック業界を超えて広がっている。今後の電力需要増加を見越して、電力会社や電力機器メーカーの株価も上昇。産業用機器のGEベルノバGEV.Nや、公益のコンステレーション・エナジーCEG.OとビストラVST.Nといった非テック銘柄が、AIブームを追い風にこの1年で大きく上昇している。
AI熱は、米株式市場全体のバリュエーションを歴史的な高水準へと押し上げている。LSEGデータストリームによると、S&P500指数は現在、予想株価収益率(予想PER)が22倍超と、過去4年間で最高水準付近。過去10年間の平均は18.6倍だ。
特にS&P500の11セクターの中で最もウエートの高いテクノロジーセクター.SPLRCTは、予想PERが28倍を超えており、10年平均の約22倍を大きく上回っている。
オラクルは10日の急騰を受けて、年初来で株価がほぼ倍増した。パランティアは年初から120%上昇、ブロードコムも約60%値上がりしている。
ホライズン・インベストメント・サービスのチャック・カールソン最高経営責任者(CEO)は「オラクル株の急騰には非常に驚いた。AIトレードにはまだ活気があり、大量の資金が引き続き流入することを示している」と述べた。