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COLUMN-FRB改革、パウエル氏解任よりも市場に影響大の可能性

ロイターJul 23, 2025 5:03 AM

Mike Dolan

- 米連邦準備理事会(FRB)が組織運営したり経済情勢を評価したりする方法を変えれば、FRB議長の解任よりも政策や金融市場により持続的な影響を与える可能性があるかもしれない。

ベセント米財務長官は21日、FRBの制度全体と実績を見直したいと主張し、トランプ米大統領のパウエルFRB議長に対する批判に新たな展開を加えた。nL6N3TJ01A

ベセント氏は米CNBCテレビのインタビューで、FRBがインフレの目立った兆候がないにもかかわらず「関税を巡る脅威を大げさに取り上げた」ため、中央銀行としての仕組みの徹底的な見直しを検討するだけの正当な理由があると述べた。「FRBで働いている博士号取得者たちみんなが何をしているのか、私には分からない」と話した。

トランプ氏が毎日のように要求しているように、ベセント氏がただ政策金利の引き下げを早めるようFRBに一層圧力をかけているだけなのか、あるいは米政府が本当にFRBの組織運営や経済分析、政策実施の在り方について本格的に見直そうとしているのかどうかはまだ不明だ。

  ここ数週間はトランプ氏がパウエル氏を解任しようとしている状況について憶測が飛び交っているが、FRBの組織運営の在り方を変えることができれば、議長1人を単に辞めさせるよりも影響がはるかに広範囲に及び大きくなる可能性があるだろう。

FRB議長はもちろん重要な役職であり、政治的な理由に基づく解任はFRBの独立性に対する重大な挑戦となるだろう。しかし、FRB議長は結局のところ政策決定会合でたった1票を投じる存在に過ぎず、FRBの政策決定は部分的に、必要以上の政治的影響を受けないよう守られた構造となっている。

連邦公開市場委員会(FOMC)は7人のFRB理事と5人の地区連銀総裁で構成されているが、FOMCの議長と副議長は毎年初め委員会の投票で選ばれる。FRB議長が慣例としてFOMC議長を務めるが必須ではない。

もしも政治的に偏った人物がFRB議長に任命されてFOMCのメンバーの大多数が納得しなければ、理論上は不信任の表明として別の人物をFOMC議長に投票で選べるだろう。

しかし、どちらにしても、FRB議長はたった一票に過ぎない。

  <代償はあまりに高い>

FRBの制度構造を変更するには議会の承認が必要だが、強力なトランプ支持者を含めて多くの共和党議員はFRBに対する介入に慎重姿勢を示しているため、承認手続きに時間がかかる可能性がある。さらに、最近の最高裁判決はFRBの「歴史的に特別な地位」を理由に制度を維持することを支持した。

一方、FRBの思考・予測手法、運営方法に影響を与えるのは別問題だ。

事情をさらに複雑にすることには、21日付の米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、ベセント氏がパウエル氏の解任に反対するとトランプ氏に助言し、パウエル氏が訴訟を起こしたり議会が後任の承認を遅らせたりする可能性があると主張したという。いずれの場合になってもFRB議長の空白期間が生じ、バイデン前大統領が任命した副議長のフィリップ・ジェファーソン氏がその間に議長を務めることになるだろう。

WSJによると、ベセント氏はパウエル氏を解任する代償として、金融市場の混乱や経済的な不確実性が生じる可能性があるため実際的に得られる利益が少なく、パウエル氏の議長任期が2026年5月に終了するまで待つほうがいいと主張したという。

トランプ氏はWSJの報道を「偽ニュース」と否定した。ベセント氏はトランプ氏が最終的に判断すると述べた。

しかし、パウエル氏の解任が容易ではないため、トランプ政権はFRBに対して利下げを早期に実施させるように違った形で圧力をかける方がより現実的な結果をもたらすとみているのかもしれない。

結局のところ、トランプ氏が任命したウォラー理事とボウマン理事の2人は既にすぐに利下げするよう主張しており、来年のこの時期までにパウエル氏を含めてさらに2つのポストが空く見込みだ。そうなれば、FOMCの過半数ではないにしても、トランプ氏の任命者がFRB理事会の多数派を占める可能性がある。

SGHマクロ・アドバイザーズのティム・ドゥイ氏は、ホワイトハウスがFRBを再構築するためには、さらに多くの理事ポストを獲得して、FOMCの残りのメンバーである地区連銀総裁5人の票数を上回るだけ十分な数のトランプ氏の任命者を多く送り込む必要があると指摘する。

それができなければ、トランプ政権がFRBの思考様式のDNAそのものを変えようとする試みと現行の経済動向を巡る想定や予測、公表の在り方を改めようとする大規模な見直しは、かなり長期間を要する可能性があるだろう。

現時点で次期議長の有力候補とされる元FRB理事のケビン・ウォーシュ氏は、従来のFRBの分析手法に批判的な人物として知られており、雇用とインフレの二律背反関係に懐疑的で、バランスシート政策を引き締めれば金利はさらに下がる可能性があると主張している。

金融市場が現在の利下げを不適切と判断すれば、もちろんインフレ期待は過度の政治的影響に対する懸念から高まり、長期金利が上昇する可能性があるだろう。

  しかし、ことはそれほど明快ではないかもしれない。

SGHマクロのドゥイ氏は「政策金利を低く維持しつつ、米国債の発行を短期債中心に移行させるのが目標のようだ」と述べた。「過度な金融緩和は長期金利を押し上げると見込まれるだろうが、FRBと財務省は長短金利操作を視野に債務状況を管理する可能性がある」

そうした繊細なバランスはうまくいく可能性もあるが、FRBがそうした方針に参加するとは容易には請け合えない。

(筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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