Pranav Kiran
[トロント 25日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米顧客管理ソフトウエア大手のセールスフォースCRM.Nは、技術革新のはざまで宙ぶらりん状態に陥っている。同社の中核的ビジネスモデルであるソフトウエアのサブスクリプションは人工知能(AI)に代替される恐れが強まっているが、同社は最終的にAIが自社の利益に転じる可能性に賭け、AIエージェントに投資している。だが、そうした未来はまだ到来していない。破壊的イノベーションのスピードは速過ぎると同時に、遅過ぎるのだ。
マーク・ベニオフ最高経営責任者(CEO)率いるセールスフォースはAIを「脅威」ではなく「好機」だと主張している。同社は25日、直近2会計年度にAIエージェントが自社プラットフォーム上で24億件ものタスクを実行したと発表し、投資家に新たな指標を公開した。つまり「ツール」に代わって「結果」の強調に軸足を移し、2027年後半にはオーガニックな(買収によらない自律的な)増収が加速するとの見通しを示した。年間経常収益(ARR)の拡大ペースが3年連続で減速するのを目の当たりにしてきた株主にとって、これは安心材料だろう。nL6N3ZL1AR
ソフトウエア株は2大ショックによって圧迫されてきた。2022年以来の金利上昇と、アンソロピックなどAI企業の猛進だ。ソフトウエア企業は金利上昇に対し、コスト削減による利ざや拡大で対処した。しかし、より厄介なのはAIがもたらした激変の方で、ソフトウエア・サービス企業の株式時価総額を8000億ドル以上も吹き飛ばした。
AIに適応した新たなビジネスモデルの売り込みは、ベニオフCEOが完全にコントロールできるものではない。顧客が新たな働き方を受け入れるかどうか次第だ。同時に、成功は諸刃(もろは)の剣になる。タスクベースのシステムへの移行は、従来型のサブスクリプションを脅かしかねないからだ。
結果が出るまでには、しばらく時間がかかりそうだ。調査会社ガートナーの推計では、AI投資2兆5000億ドルの大半は今年、巨大データセンターなどインフラに向けられる見通し。つまり処理能力はまだ拡大途上だ。また大企業は、金融や給与計算業務など重要な機能を一変させかねない新技術の採用スピードが遅い。
AIエージェントが本当に未来を切り開くと仮定しても、だれがその価値の大半を手に入れるかは定かでない。今のところ、市場のバリュエーションで有利に立っているのはアンソロピックのような大規模言語モデル(LLM)開発企業だ。セールスフォースのように、こうした企業のモデルが動作する場となるプラットフォームはまだ、自社の優位性を主張している段階にある。
(筆者は「ReutersBreakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)