
Phil Stewart Jonathan Landay
[ワシントン 25日 ロイター] - 4月初旬のある朝、米政府の情報機関を統括する国家情報長官室(ODNI)の職員が、首都ワシントン周辺にある米中央情報局(CIA)の秘密の文書保管施設に突然現れた。ケネディ元大統領と弟のロバート・ケネディ元司法長官、公民権運動指導者キング牧師の暗殺に関する、機密扱いのCIAファイルを押収するのが目的だった。
関係者3人によると、ODNIの職員らは予告なしに車両で乗りつけ、CIAは不意打ちを食らった。職員はギャバード国家情報長官の指示を受けており、CIAの手から機密文書を取り上げ、国立公文書館で公開手続きを始めたい意向だったという。
事情に詳しい1人によると、CIAはこの日に「より高位の政府機関」から指示を受けることを知らされていなかった。この関係者は、おそらくODNIとCIAの関係が最も緊迫した場面だったと振り返った。
ファイルの捜索を主導したのは、国防総省の主要情報機関である国防情報局(DIA)の職員のポール・アレン・マクドナルド2世という人物で、彼は自分たちがギャバード氏からの「任務を帯びている」と宣言した、と2人が語った。
この日は、トランプ政権の当局者でCIAの元職員であるアマリリス・フォックス・ケネディ氏も短時間、現場に姿を見せた。フォックス・ケネディ氏はケネディ厚生長官の義理の娘で、文書保管施設に入るために必要なカードを持っていなかったが入館を認められたと、2人が述べた。1人によると、フォックス・ケネディ氏は施設内に1時間ほどとどまり、大量の文書のデジタル化作業に注力した。作業は翌朝午前2時まで続き、膨大な文書が国立公文書館に移された。
これらの機密文書がCIAから移された際の様子が報じられるのは初めて。CIAとODNIが緊迫した関係にあることが改めて浮き彫りになった。
ホワイトハウスの報道官は、トランプ氏はギャバード長官とラトクリフCIA長官の双方を完全に信頼しており、「既存メディアによる内部対立を生み出そうとする試みは的外れで、うまくいかないだろう」と述べた。
トランプ氏は1月に大統領令を発し、ODNIなどの情報機関に対し、ケネディ元大統領とその弟、そしてキング牧師の暗殺に関連する記録の機密解除を指示した。その際、機密解除の計画を45日以内に提示するよう指示したが、その期限は3月で終了。ODNIの内部で進展の遅さに対する不満が高まっていたと、関係者の1人が述べた。
ロイターはギャバード氏がこの任務を直接指示したのか、また機密解除作業に関する個々の任務についてトランプ氏が事前にどの程度報告を受けていたのかを独自に確認できなかった。
ODNIとCIAは、両機関は「国民の関心がある文書の公開と機密解除を進め、情報機関の信頼回復というトランプ氏から与えられた使命を遂行するため、これまでも、そしてこれからも協力していく」との声明を共同で発表した。
<ODNIの強硬姿勢>
ODNIの職員はCIAの文書保管施設に到着すると、CIAの承認なしでも文書を押収する法的権限を持つと主張する文書を示し、この手続きを妨害すれば責任を問われる可能性があると警告したと、事情に詳しい1人は述べた。この関係者は、ODNIがこうした措置を取ったのは「CIAの職員が、それまで協力を拒んでいたためで、だから長官は、ある意味で強硬な姿勢を取った」と説明した。
一方で別の人物は、CIA側は非常に協力的だったと述べた。
ただ、事情に詳しい2人は、文書保管施設の入口で緊張が走り、怒声も聞かれたと証言した。しかしODNIと、ロイターが話を聞いた別の2人は、ODNIとCIAのやり取りはプロフェッショナルなものだったと述べた。このうち1人は、ケネディ元大統領暗殺から「60年が経過している」という認識が共有されていたようだと述べ、機密解除を進めるべき時が来ていると指摘した。
ロイターは、現場となったCIA文書保管施設の正式な名称や場所を特定することはできなかった。
ギャバード氏は4月10日の閣議で、文書の機密解除の取り組みについて大まかに説明し、トランプ氏に対して、CIAと米連邦捜査局(FBI)の文書庫を捜索する「ハンター(捜索員)」を送ったと説明。「われわれは積極的に動き、真実を探し出そうとしている」と発言した。トランプ氏は文書捜索の取り組みを称賛し、ケネディ厚生長官も同調した。
国立公文書館はトランプ氏の指示を受け、3月にCIA資料を含む8万点ほどのケネディ元大統領暗殺関連文書の公開を開始した。しかし暗殺が単独犯の犯行であったという公式見解を揺るがす新情報は見当たらなかった。4月と5月に公開された7万件のロバート・ケネディ氏関連文書についても、これまでのところ同様だ。