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〔アングル〕G20議長国南ア、米不在乗り越え宣言採択 多国間主義に勝利もたらす

ロイターNov 25, 2025 5:09 AM

Tim Cocks Andrea Shalal

- 23日に閉幕した今年の20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)は、議長国の南アフリカが米国とアルゼンチンからの反対を押し切る形で首脳宣言を出した。最有力国でありながら不参加だった米国の反対を乗り越えて首脳宣言の採択にこぎ着けたことで、少なくとも当面はG20の今後のあり方を巡る疑念を押さえ込み、このところ連敗続きの多国間主義に勝利をもたらした。

南ア政府が首脳宣言をまとめるのは難しいとの見方が多く、気候変動や対外債務に苦しむ貧困国への支援といった課題は先送りされるとみられていた。

今回の首脳宣言採択で、何年も実質的な合意形成に苦しんできたG20が強化され、後退しているとみられていた多国間主義の力が浮き彫りになったと研究者や関係者は指摘している。

<不平等対策の枠組み提示>

宣言採択に来年の議長国である米国は激怒した。ホワイトハウスは南アが議長国という立場を「武器」として使い、G20創設時の原則である「全会一致のコンセンサス」を損なったと非難。来年はトランプ米大統領が議長としてG20の「正統性」を取り戻すと主張した。

トランプ米大統領は南ア政府が少数派の白人を迫害していると主張し、今回のサミットへの参加をボイコットしていた。

ホワイトハウスは、来年のG20関連行事に南アを招待しない計画があるかどうかについて、問い合わせに即答しなかった。

今回の首脳宣言の最終段落は慎重な言い回しになっており、英国と韓国で将来の首脳会議を開催すること、そして議長国である米国の下で「協力して取り組む」ことだけを約束していると、南アの代表は説明した。

南アのラマポーザ大統領は、輪番制となっている議長国職の引き継ぎ式で、下級外交官に引き渡すという米国の提案を拒否した。引き継ぎ式は、同格の外交官同士で手がけるのが通例だ。

サミットに出席した南アの代表の1人によると、21日に草案の合意が得られた際には交渉担当者の間に安堵の波が広がったという。

オバマ政権の元高官でアトランティック・カウンシル国際経済部門を率いるジョシュ・リプスキー氏は「G20消滅の報は大げさすぎる。危機の際には、首脳会議に出席している指導者の顔ぶれにかかわらず、G20は存続しているだろう」と話した。

今回の宣言はG20加盟国間でしばしば対立を引き起こす気候や再生可能エネルギーといった問題を取り上げ、不平等に取り組む初の世界規模のパネルを提案した。国際NGOオックスファムの経済正義担当シニアディレクター、ナビル・アフメド氏は「世界の指導者が参加する会合で、不平等が国際的な課題の中心に据えられたのは初めてだ」と評価した。

<トランプ氏への新たなアプローチ>

米シンクタンク、アトランティック・カウンシルのユーラシアセンターのマイケル・ボチューキウ氏によると、G20の指導者はトランプ氏の怒りに直面したことで、「彼をおだてるのか、それとも立ち向かうのか」という選択肢に直面し、後者を選んだ。「指導者はうんざりしていた。今回の会合はトランプ氏への対処方法に新たなアプローチをもたらす可能性がある」と解説した。複数の代表も同じ見解を示した。

ある関係者は、22日に団結を示したのは開催国を支持し、米国がG20初のアフリカサミットへの関与を拒否したことを非難する目的があったと明らかにした。別の関係者は、米国の行動によって、トランプ氏と対立しているインドや南アのような国と、良好な関係を維持しようとする英国やフランスのような国がまとまったと解説した。

ただ、米国が議長国になれば今回の会合での取り組みの多くが覆される恐れがある。

米国は自国が議長国期間中にG20の焦点を首脳会議と財務フォーラムだけに絞り、エネルギー、保健、環境など他の作業部会や閣僚会議を切り捨てる見通し。米財務省報道官は「米国は2026年のG20議長国として、経済成長、規制緩和、豊富なエネルギーを主要な柱として強調する」と訴えた。

事情に詳しい情報筋によると、米国は国際通貨基金(IMF)と世界銀行を引き続き招待する一方で、国連機関を除外する計画だ。

もっとも、こうした流れは1年間だけのことだ。ある代表は、最悪の場合には各国は「米国の議長国期間中はおとなしくして、その後で作業を再開する」こともできると話す。

苦々しい意見の相違はあるものの、米国のG20議題は、開発、経済成長、金融安定など重要分野が南アの議題と重なると、国連顧問で非営利団体ジュビリーUSAネットワークのエリック・ルコンプト氏は指摘。「米国が主導権を握ることで、特定の分野は引き継ぎが行われると思う」との見通しを示した。

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