Jonathan Guilford
[ニューヨーク 23日 ロイター BREAKINGVIEWS - 米電気自動車(EV)大手テスラ TSLA.O は、自動車業界の構図を一変させたとはいえ、もはや投資家目線では自動車メーカーの要素が一段と薄れつつある。第2・四半期のさえない業績を受け、イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)がテスラを恐らくロボタクシー(自動運転タクシー)とヒト型ロボット、エネルギー貯蔵といった事業に軸足を移す方向に進めようとしているとの見方が強まっている。EV販売が落ち込み、低価格モデル投入の約束も中途半場である以上、テスラこそがEVメーカーの象徴という時代は一段と遠くなってしまった。
テスラが23日に発表した第2・四半期決算は大方の予想通りの低調ぶりだった。マスク氏の「政治的冒険」によって環境保護重視派というテスラの典型的な購買層が離反。同氏が関与する他の企業でやらなければならない仕事もどんどん増えた結果、テスラは中国のBYD(比亜迪)nL6N3TK0XCなどのライバルに先行を許し、営業利益は42%減の9億2300万ドル、売上高は12%減となった。
逆風はある程度避けられなかったのだろう。トランプ大統領による一連の関税措置を乗り切れる比較的強固な立ち位置にあったテスラだが、既に停滞気味の米EV市場を支える力を取り外す政策が打撃になろうとしている。既存メーカーが規制クレジットを購入する動機を失わせるようなトランプ政権の動きが、テスラの収益を直撃するのだ。
利益を計上するのが難しいことで知られる業界で収益化の仕組みを解明したテスラは今、幾つかのマイナス要素が組み合わさって成長に急ブレーキがかかっている。クレジット収入を除く自動車部門の粗利益率は15%と前期比でやや上昇したとはいえ、なお2022年のピークの半分に過ぎない。全体の営業利益率も4%で、ゼネラル・モーターズ(GM)GM.Nの7%を下回った。1台販売する際のコスト削減は頭打ちとなり、最新の「モデルY」による販売回復の可能性も低下したようにみえる。
より手頃な価格帯のEV量産化に向けて少しずつ前進はしているが、マスク氏の野心が抑制されていることから、3万ドル未満に価格が設定される公算は乏しそうだ。LSEGのデータが示すような予想利益に基づく株価収益率(PER)145倍というテスラの評価は、EV以外の事業に依拠しているのは間違いない。しかしそうした事業に目を向けても、例えば自動運転はアルファベットGOOGL.O傘下のウェイモなどの背中を追いかけている状況だ。かつては急成長していた電力網のバックアップが可能な大型電池の販売も、4期連続で失速している。テスラは今、一方で守りを固め、他方で他社に追い付くことを迫られるという矛盾する行動を余儀なくされている。
●背景となるニュース
*テスラが23日発表した第2・四半期決算は、売上高が225億ドルで前年同期比12%減少した。中核となる自動車部門の売上高は16%減の167億ドル。クレジット収入を除く粗利益率は15%だった。nL6N3TK0XC
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)